【質問者】
上田恭典 倉敷中央病院血液内科主任部長
【根治的手術としての人工血管置換術,低侵襲のステントグラフト挿入と抗凝固療法】
DICは様々な生体ストレスによって生じる生体の凝固および炎症反応を伴う症候群であり,その病理学的な本態は全身血管の微小血栓症です。大動脈瘤に併発するDICは,その凝固活性に比し線溶活性が高く,いわゆる出血しやすいDICとして慢性的に経過します。大動脈瘤におけるDICの発症機序は,瘤内部における壁在血栓や血液の乱流発生による過凝固状態や二次線溶の亢進が原因とされています。さらに,ずり応力が内皮細胞と平滑筋細胞の,より継続する線溶因子の発現をきたし線溶亢進に寄与しているとの説もあります。
臨床症状はきわめて慢性的に経過します。出血症状をほとんど認めないものから,観血的医療行為時や外傷時の止血困難,抗血栓療法中に出血症状を認めるものまで様々です。検査成績上は,慢性的な血小板数の低下,フィブリノゲンの低下,FDP,Dダイマー,トロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TA T),プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(plasmin-α2 plasmin inhibitor complex:PIC)の上昇を認め,α2-プラスミンインヒビターは減少していることが多いです。凝固活性の上昇とその上昇に比し線溶活性が高い,いわゆる出血しやすいDICの特徴を有します。また高齢者の原因不明の慢性血小板減少症の鑑別のひとつに挙げてよい疾患です。
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