肺血管外への異常な水分貯留をきたし,ガス交換障害を呈する病態である。心原性肺水腫は,左心不全に伴い,左房圧の上昇に伴って肺静脈圧および肺毛細血管内圧が上昇して生じる肺水腫である。軽症例では間質内への水分貯留(間質性浮腫)にとどまるが,重症例では肺胞腔内にまで液体成分の貯留(肺胞浮腫)を生じる。
労作時息切れ,呼吸困難や起坐呼吸を呈する。不穏,窒息感,意識障害が前面に出ることもある。ピンク色泡沫状痰は特徴的である。
チアノーゼ,頻呼吸,頻脈がみられ,聴診では湿性ラ音(水泡音),奔馬調律を認める。
胸部X線写真上,肺門部を中心とした浸潤影(butterfly shadow)やKerley’s B lineを認める。心拡大や胸水貯留を伴うことが多い。
心原性肺水腫では血清BNPが上昇し,非心原性肺水腫や他の呼吸器疾患との鑑別に有用である。
緊急の治療を要する病態であり,迅速に血行動態を把握し,速やかに呼吸・循環動態を安定させることが重要である。
初期治療と並行して肺水腫の原因検索を行い,原因に対する対応を検討する。特に急性冠症候群が疑われる場合は,緊急カテーテル検査・治療を考慮すべきである。
速やかに末梢冷感の有無,血圧,心拍数,呼吸数,SpO2,体温などを把握し,クリニカルシナリオに基づいた病態分類を行った上で基本的な治療方針を立てる(表)。
しばしば呼吸状態が急速に悪化し,重篤な状態に陥ることがあるため,緊急の対応を要する。
治療法が大きく異なるため,肺水腫の原因検索や肺炎など他の呼吸器疾患の除外が重要である。
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