喘息と慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)のオーバーラップ(asthma and COPD overlap:ACO)は慢性の気流閉塞を示し,喘息とCOPDのそれぞれの特徴を併せ持つ病態である。ACOは喘息やCOPDの単独疾患と比べて重症で増悪しやすく,呼吸機能の低下が大きい。
40歳以上で,呼吸機能検査で気管支拡張薬吸入後の1秒率(FEV1/FVC:FEV1%)が70%未満であり,COPDと喘息の特徴を有するときにACOと診断する。診断基準としては,COPDの特徴として,①喫煙歴(10pack-years)あるいは同程度の大気汚染曝露,②胸部CTにおける気腫性変化,③肺拡散能障害(%DLCO<80%あるいは%DLCO/VA<80%)のうち1項目+喘息の特徴として,①変動性あるいは発作性の咳,痰,呼吸困難,②40歳以前の喘息の既往,③呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)>35ppbのうち2項目,あるいは①,②,③のいずれか1項目と,④-1:通年性アレルギー性鼻炎の合併,④-2:気道可逆性(FEV1>12%かつ200mLの変化),④-3:末梢血好酸球数>5%あるいは>300/μL,④-4:総IgE高値あるいは通年性吸入抗原に対する特異的IgE高値のうち2項目以上を満たすことが提唱されている1)。
喘息とCOPDの両者を治療するために吸入ステロイドと気管支拡張薬を併用する。選択する気管支拡張薬としては長時間作用性β2刺激薬(long-acting β2 agonist:LABA)と長時間作用性抗コリン薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA)のどちらでもよいが,実際には吸入ステロイドとの配合薬である吸入ステロイド/β2刺激薬〔inhaled corticosteroid(ICS)/LABA〕配合薬を用いることが多い。効果が不十分な場合には抗コリン薬を追加するが,吸入ステロイド/β2刺激薬/抗コリン薬(ICS/LABA/LAMA)配合薬を用いるのが便利である。
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