言語の流暢性障害であり,発話の流暢性が失われる疾患である。流暢性の障害は,音声,音節,単語,言い回しにおける不規則な速度,リズム,繰り返しによって特徴づけられる。背景に社交不安症(社会不安障害)や発達障害を有する場合があり,小児保健に関わる専門職,機関を含め,一般的な親ガイダンスのひとつとして,正確な病態およびケアに関するさらなる啓発が重要な領域である。
現時点で原因不明である。双子研究では一卵性双生児に有意に吃音が多い。特にGNPTAB,NAGPAなどのリソソーム蛋白に関わる酵素をコードする遺伝子や,SLC6A3,DRD2など,ドパミン生合成に関連する遺伝子異常が報告されている。
弓状束の神経接合の低下や,両側補足運動野-基底核,上側頭回-基底核などの脳形態異常も報告されており,脳機能システムの機能異常が推測されている。
・発達性吃音:幼少時期に発吃するもの
・心因性吃音:心的ストレスが要因となるもの
・神経原性吃音:中枢神経疾患の合併症として起こるもの
①中核症状
連発(繰り返し):お,お,お,おかあさん,
伸発(引き伸ばし):ぼーーーーーく,の消しゴム
難発(ブロック,阻止):,,,,,,とけい
②特徴
斉読:歌,メトロノーム下では生じにくい
波現象:月単位で症状が変動する
一貫性:吃音が生じやすい単語・行が存在する
適応:1度言えると,そのあとは言いやすい
③臨床経過
7~8割は自然に治癒する。特に74%は発症4年以内に自然回復する。
8歳で吃音が顕著である児は,思春期まで症状が続くことが多い。自然治癒しなかった場合,根治は難しいことがある。
④難治のリスクファクター
・家族歴を持つ
・3歳半以降の発症
・半年以上症状が続いている
・男児
・構音障害や言語理解の障害が併存している
・言語発達がより進んでいる,または遅れている,など。
⑤吃音の進展段階
第1層:発症直後の幼児
2~4歳で急に発症,連発が主であり,自覚に乏しい。
第2層:学童期
伸発が混在,随伴運動,自覚が生じる。
第3層:思春期前半
難発,努力性の吃音。
第4層:思春期後半~成人期
吃音に対する不安,会話の回避,対人関係に影響を及ぼす。
生涯発症率は5%と報告され,幼少時期の有病率は2.4%である。成人期は文化,言語によらず,1%と言われている。非流暢性を持つ就学前の子どもの75%は介入なしに改善するが,7歳以降の場合,完全に改善するかは注意を要する。
性差があり,男性は女性の2.1倍と報告されている。
DSM-5では,「神経発達障害(neurodevelopmental disorders)」という大カテゴリに分類され,コミュニケーション障害(communication disabilities)の1分類である,吃音,小児期発症の流暢性障害(stuttering,child-onset fluency)として明示されている。またICD-10では,吃音症とされる。日本国内においては「どもり」とも言われているが,特に近年「どもり」は差別用語や放送禁止用語とみなされており,公の場で使われなくなっている。
①社交不安症(社会不安障害)
他者の注目を浴びる場面に関して,不安,恐怖を抱き,その場面を回避することで,社会生活に支障をきたしている状況である。成人症例の5~6割は,併存すると言われている。
②神経発達障害
吃音の18%に発達障害(知的発達症,自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症,など)が併存すると言われている。
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