富士フイルムは4月15日、臨床研究や観察研究の枠組みで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に使用されている抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)の生産体制を拡大し、増産を開始したと発表した。
COVID-19向けのアビガンの生産は、政府の要請を受け、開発メーカーの富士フイルム富山化学で3月上旬から開始。富士フイルムはその後、グループ会社の富士フイルム和光純薬で医薬品中間体の生産設備を増強、原料メーカーや各生産工程における協力会社など国内外の企業とも連携し、増産を推進する体制を確立した。
富士フイルムは「今後、段階的に生産能力を向上させ、今年7月には約10万人分/月(生産開始時に比べ約2.5倍)、9月には約30万人分/月(同約7倍)の生産を実現する」としている。
新型・再興型インフルエンザ発生時に国の判断で使用できる医薬品として2014年3月に国内で承認されたアビガンは、添付文書で1人当たり投与量8000㎎(1 日目1600mg×2 回、2 ~5 日目600mg×2 回、総投与期間5日間)と規定。
COVID-19の治療に使用する場合の1人分の投与量はそれよりもはるかに多く、日本感染症学会の「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方」によると約3倍の最大2万4400㎎(1日目1800mg×2回、2日目以降800mg×2回、最長14日間)とされており、富士フイルムもこの考え方に準拠して生産能力を向上させていく方針だ。
政府が4月7日の緊急経済対策に盛り込んだアビガンの備蓄量の目標(2020年度内)は200万人分。これに対応するには488億㎎(200㎎錠で2億4400万錠)相当のアビガンの生産が必要という計算になるが、富士フイルムは「原薬製造設備も増強して生産能力のさらなる拡大を図り、日本政府の備蓄増や海外からの提供要請に対応していく」と、国の要請や海外30か国以上から寄せられているアビガン提供要望に前向きに応える姿勢を示している。
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