【現状と今後の展望】
がんに対する免疫療法の歴史は長いが,近年の免疫チェックポイント阻害薬の登場により標準治療の選択肢のひとつとなった。非小細胞肺癌では,免疫細胞のブレーキとなるPD-1/PD-L1経路のいずれかの分子を標的とした抗体製剤が用いられており,最新のガイドラインでは,従来の殺細胞性抗癌剤との併用または単独での使用や,放射線化学療法後の維持療法での使用が推奨されている1)。いずれの臨床試験でも一部の症例でlong tail effectと呼ばれる長期生存が認められ,これが肺癌患者に光明を与えている。
非小細胞肺癌の治療に革命的な変化をもたらした免疫チェックポイント阻害薬であるが,多くの課題が残されている。がん細胞のPD-L1発現量は効果予測因子としての有用性は限定的であり,その結果として,無効またはきわめて効果の乏しい症例にも本薬剤が使用されており,少なくない副作用や医療経済的な側面からも望ましい状況ではない。また,一度効果が得られた症例における耐性化も克服すべき課題である。がん特異抗原の発現低下や他のチェックポイント分子の発現増強など,複数の耐性機序が同定されているが,症例に応じた耐性機序の克服でさらなる治療効果の改善が期待される2)。さらに,最近適応追加となった小細胞肺癌においても,同様の課題を克服していく必要がある3)。
【文献】
1) 日本肺癌学会:肺癌診療ガイドライン2018年版. 2019.
2) Jenkins RW, et al:Br J Cancer. 2018;118(1):9-16.
3) Horn L, et al:N Engl J Med. 2018;379(23): 2220-9.
【解説】
小林信明*1,金子 猛*2 横浜市立大学呼吸器病学 *1講師 *2主任教授