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僧帽弁狭窄症[私の治療]

No.5010 (2020年05月02日発行) P.42

川本俊輔 (東北医科薬科大学医学部心臓血管外科学教授)

登録日: 2020-05-05

最終更新日: 2020-04-28

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  • 僧帽弁狭窄症(mitral stenosis:MS)は,溶連菌感染に続発するリウマチ熱の既往を有するリウマチ性のものは減少し,加齢・血液透析などに伴う石灰化を主とする変性性のものが増加している。僧帽弁狭窄に伴う左房圧の上昇による肺うっ血が主病態であるが,肺高血圧から三尖弁閉鎖不全を伴う右心不全症状もきたしうる。左心室の充満効率が低下するため1回拍出量は小さくなり,心拍出量を維持するために頻脈傾向となる。心房細動を併発すると,よりその傾向は顕著となる。

    ▶診断のポイント

    心雑音により気づかれることは稀で,心房細動・脳梗塞・心不全の発症により診断されることも多い。
    心臓超音波検査が非常に有用で,解剖学的な弁口面積の計測や機能的な圧較差の評価,さらには三尖弁逆流(TR-PG)の評価により肺高血圧の有無も推定可能である。ただし,大動脈弁病変など左心室拡張障害をきたす疾患の合併があると,左室拡張期圧の早期上昇により,僧帽弁圧較差が過小評価されることになるため,注意が必要である。その場合,心臓カテーテル検査による心内圧測定を組み合わせ,総合的に判断する。

    僧帽弁形態のより詳細な評価には,経食道心エコーが有用である。心臓CT検査や心臓MRI検査は,左心耳血栓の診断だけでなく,左心房容積や逆流分画の評価にも有用である。無症状と思われても患者本人が無意識のうちに活動度を制限していることも多いので,治療介入の適応判断には,丁寧な問診に加えて,負荷心エコーや運動耐容能の評価も検討するべきである。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    基本病態となる心房細動と心拍出量低下の改善を図ることを念頭に置く。初動としては,心拍数のコントロールと抗凝固療法を導入しつつ,僧帽弁の形態・機能および,そのほかの心疾患も合わせて評価する。

    MSの重症度は,解剖学的な弁口面積だけでは規定されず,むしろ圧較差など機能的な評価が優先されるべきである。

    心機能・全身の耐術能・人工弁の耐久性なども加味し,手術介入のタイミングが遅くなりすぎないように留意する。

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