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交絡因子の調整という魔物─観察試験が誤った結果を導く理由 [J-CLEAR通信(54)]

No.4758 (2015年07月04日発行) P.44

谷 明博 (加納総合病院循環器内科部長,J-CLEAR評議員)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 降圧薬投与後の血圧は交絡因子ではない

    疫学などの観察研究では,交絡因子という言葉がよく出てくる。そこで,交絡因子とは何かを簡単に説明しよう。

    飲酒と心筋梗塞発症の関係をみる観察試験を行ったところ,飲酒群で発症が多いという結果が得られたとする。しかし,飲酒群には喫煙者が多く,これが飲酒群に心筋梗塞発症の多い理由だったのである。この場合の喫煙を交絡因子と言う。そこで非喫煙群と喫煙群にわけて(喫煙の有無を同じ条件にする=交絡因子を調整)それぞれの群内で解析したところ,飲酒と心筋梗塞には関連がないという結果が得られた。これを「交絡因子の調整後は飲酒との関連がみられなかった」と言う。

    ところが,交絡因子の必要条件としてあまり知られていないことがある。それは,「原因と結果との間にある中間変数は交絡因子ではない」というものである。例1として,高血圧患者を生活習慣改善群と降圧薬投与群にわけ,どちらの予後が良好かをみる観察試験を行ったとしよう。生データでは降圧薬投与群にイベントが多くなる。それは治療前血圧が著明に高い患者に降圧薬が処方され,また治療前血圧が著明に高い患者にイベントが多い,という関連があるからである。そのため,この観察試験から正しい結果を得るには,血圧という交絡因子の調整を行わねばならない。

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