【質問者】
岡本史樹 筑波大学医学医療系眼科講師
【格子状変性に伴う萎縮円孔からの浅い網膜剝離なら強膜内陥術を】
若年者と中高年者の裂孔原性網膜剝離の特徴の違いは,硝子体の性状変化によってもたらされます。加齢により硝子体の液化が進むと,硝子体と網膜の癒着部が裂孔(多くは馬蹄形)となり,裂孔を通じて硝子体の液化が網膜下に入り込み,丈の高い網膜剝離となります。一方若年者では,周辺部網膜の格子状変性内に生じた円孔からの浅い網膜剝離が多くみられます。ゆっくりと進行する網膜剝離では,剝離部の境界に複数のdemarcation lineがみられ,それが網膜下索状物を形成することがあります。
ただ最近は,近視化が進む影響か,若年者であっても硝子体が液化し,胞状の網膜剝離をきたすことも少なくないようです。家族性滲出性硝子体網膜症と関連して生じる網膜剝離の可能性にも留意し,疑わしいときは対側眼の眼底検査もしておかなくてはなりません。
若年者の裂孔原性網膜剝離に対する術式選択については,以前は強膜内陥術が多く行われていました。しかし筆者らが最近行った,多施設における562例の若年性網膜剝離の術式の調査結果1)によれば,硝子体手術と強膜内陥術がほぼ同程度の頻度で行われていました。硝子体手術がより低侵襲となったことで,直視下での手術操作で終始できる,術終了時点で網膜下液をより確実に減らすことができる等の長所を生かして選択される機会が増えたと考えられます。
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