【様々な精神疾患における脳の構造変化の捕捉が可能になってきている】
以下はすべて研究レベルの話であるが,近年,脳MRIに関して撮像方法が進歩している。
2000年代に入り安静時と課題に対する賦活時のT2信号を比較することで脳血流の分布を可視化することが可能となり,fMRI(機能的MRI)として研究が進むようになった。さらに,構造的画像でも脳体積や微細な白質の異方性をとらえることが可能となり,DTI(拡散テンソル画像)といった技法が進歩した。
統合失調症では,脳梁,皮質小脳路や視床の白質接合の脆弱性が指摘され,これが体積の減少につながっていることがわかった1)。さらに,MRS(磁気共鳴分光法)は代謝物質の分布を可視化し,特にプロトンのMRSは検出感度が高いことで知られる。MRSを用いると,うつ病では内側前頭皮質におけるグルタミン酸作動性神経の代謝産物が低下していた2)。
構造変化をとらえることができないと考えられてきた様々な精神疾患に対し,脳画像によるアプローチが進んでいる。画像検査は可視化できるところが強みであり,近い将来,診療において一役を担う可能性を秘めている。
【文献】
1) Vitolo E, et al:Psychiatry Res Neuroimaging. 2017;270:8-21.
2) Moriguchi S, et al:Mol Psychiatry. 2019;24(7): 952-64.
【解説】
丸山惣一郎,金沢徹文* 大阪医科大学神経精神医学 *教授