【質問者】
宮地 茂 愛知医科大学脳神経外科学講座主任教授
【神経内視鏡手術の発展と外視鏡の導入】
頭蓋底は頭蓋冠と対極の用語であり,文字通り「頭蓋の“底”」を指します。脳深部に発生する頭蓋底腫瘍は,神経や血管を巻き込みながら発育するため摘出が難しく,病変への到達も困難です。頭蓋底手術は,深部の骨隆起を削除して,狭く深い術野を極力広く浅くしようとするもので,本手術手技を用いることにより,死角が少なく脳の圧排を最小限とする術野が得られます。
頭蓋底手術を行うためには,詳細な解剖の知識と正確な骨削除操作が要求されます。1980年代後半から1990年代にかけて微小解剖の研究が進み,脳深部へ安全に到達する方法も多数報告されるようになりました。これに脳神経や神経線維を電気的に同定する神経モニタリングを併用することで,神経機能を温存した腫瘍摘出が可能となり,手術成績も向上しました。頻用されるのは,視神経,顔面神経,内耳神経,迷走神経,錐体路などのモニタリングです。
手術をする際,今までは主に顕微鏡を使用していましたが,2000年代後半からは内視鏡,2019年からは外視鏡が導入されはじめています。本稿ではこの2つについて紹介します。
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