1 健診医に必要なもの
乳幼児健診に求められる役割は何か?健診医に求められるものは何か?行政委託された乳幼児健診の健診医は,一定の質を確保する必要がある。まず必要なのは,疾患スクリーニングを行う診察能力と正常であるものを正常と判断できる能力である。そして,子育てに様々な不安を抱える保護者を応援し支援する志である。本稿では,乳幼児健診を担うからには最低限備えて欲しい内容を述べたつもりである。しかし,本稿だけでは十分ではないので,是非,他書・良書を必要に応じて参考にしてほしい。
2 3軸の考え方
各月齢の健診内容は,少しずつ内容が違い診察項目も多様であるが,「病気の発見」「成長の評価」「発達の評価」という3つの軸を持ちながら,それらの重みづけを変化させながら理解していくと効率的である。
3 4カ月健診
新生児の頃に比べると,体型は丸みを帯びてきて,首がすわるようになり(頸定),あやすと笑うようになってくる。昼夜のリズムが整いつつあり,保護者の睡眠時間も確保されてくる時期である。4カ月健診では,何らかの先天性疾患や早期に発見すべき疾病をスクリーニングすることに比重がある程度おかれ,発達面では特に運動発達を中心に診察が行われる。
4 9〜10カ月健診
坐位がほぼできるようになる時期になり,おもちゃで遊ぶことができている。表情豊かに,最初の指差しが出てきている時期である。この時期になると,疾病探しの比重がやや少なくなり,運動発達や知的発達としての成長を確認していくことになる。
5 1歳6カ月健診
ほぼ90%以上の児が独歩を獲得しており,単語も3〜4語は話すことができている。簡単な指示も理解できるようになり,言語発達が進んでいる。疾病スクリーニングの比重はだいぶ減り,発達の評価の重みが増え,発達障がいの兆候を保護者からの問診や質問表,診察の中からスクリーニングしていく。
6 3歳健診
よく言葉を理解し,大人とも会話が成立しており,走ったりその場でジャンプができる。一般的な身体診察がメインで特別なものはほぼなく,知的発達が順調に進んでいるのかを確認していく。多くの自治体で3歳健診が乳幼児健診の最後であり,必要な場合は躊躇なくフォロー機関につなげる。
7 子育て支援としての伝え方
健診を行った結果,正常の発達(定型発達)なのか,スクリーニングとしては何らかのフォローが必要なのか,保護者に伝える場面が必ずある。特に問題がない場合では,よく育っているということをしっかりとほめるほうが,保護者は喜ぶし子育てに自信を持つ。第一に診察医としての好感度が上がるはずである。紹介やフォローが必要な場合,重要なことは,診断名を伝えないということだ。疑い病名を伝えるのではなく心配な所見を伝えながら紹介することをお勧めする。また,これからどうしていけばいいのかというプランや指針を示すことが重要である。プランのない「経過を見ましょう」は禁句である。