9月21日からオンラインで開催された欧州糖尿病学会(EASD)では、6月の米国糖尿病学会で報告され(本サイト6月18日既報)、NEJM誌にも結果が掲載されたVERTIS CV試験について、追加解析を含む成績がFrancesco Cosentino氏(カロリンスカ大学、スウェーデン)により報告された。
VERTIS CV試験の目的は、SGLT2阻害薬“ertugliflozin”による2型糖尿病(DM)例への「心血管系(CV)死亡・心筋梗塞・脳卒中」(3-point MACE)抑制作用が、プラセボに非劣性であることの証明にあった。
対象は、脳・心・末梢動脈のいずれかにアテローム動脈硬化性疾患を有する2型DM患者8246例である。1型DM、推算糸球体濾過率(eGFR)30mL/分/1.73m2未満、NYHA分類Ⅳ度心不全などは除外されている。
平均年齢は64歳、70%を男性が占めた。DM罹患期間は平均13年間、HbA1c平均値は8.2%。平均BMIは32kg/m2だった。報告後の総合討論では、この患者群がEMPA-REG OUTCOME試験に類似しているとの指摘があった。
これら8246例は、プラセボ群、低用量SGLT2阻害薬群、高用量SGLT2阻害薬群の3群にランダム化され、二重盲検法で平均3.5年間観察された。なお解析にあたっては、SGLT2阻害薬群は低・高用量2群を併合し、1群として解析された(この点もEMPA-REG OUTCOME試験と同様)。
その結果、1次評価項目である3-point MACEの、SGLT2阻害薬群における対プラセボ群ハザード比(HR)は0.97、95%信頼区間(CI)は0.85−1.11となり、非劣性は確認されたものの(P<0.001)、優越性の証明には至らなかった。SGLT2阻害薬による3-point MACE抑制作用がプラセボを上回らなかったのは、DECLARE-TIMI 58試験と同じである(HR:0.93、95%CI:0.84−1.03)。
一方、DECLARE-TIMI 58試験のもう1つの1次評価項目であり、同試験ではSGLT2阻害薬群における有意なリスク減少が認められた「CV死亡・心不全入院」(HR:0.83、0.73−0.95)だが、VERTIS CV試験では2次評価項目として検討されたものの、有意なリスク減少を認めなかった(HR:0.88、0.75–1.03)。しかし本学会で報告された、「心不全入院」の初発だけでなく再発まで含めた成績では、SGLT2阻害薬群において「CV死亡・心不全入院」リスクは有意に減少していた(発生率比:0.83、0.72−0.96)。
本試験は、Merck Sharp & Dohme(MSD)社とPfizer社からの資金提供を受けて実施された。またNEJM誌への投稿では、Merck社とPfizer社の資金により、Engage Scientific Solutions社の援助を受けた。