【質問者】
永根基雄 杏林大学医学部脳神経外科教授
【新たな分類に基づいた,治療強度の最適化と有効な治療法の開発が望まれる】
従来,髄芽腫の治療では,年齢,術後残存腫瘍量,転移(播種)や組織型等をリスク因子として使用し,各リスクに応じた最適な治療法が開発されてきました。しかし,近年の研究成果から,髄芽腫は分子遺伝学的特性と予後が異なる4つの分子亜群(WNT,SHH,Group 3,Group 4)に分類可能であることが明らかになり1),2016年のWHO脳腫瘍分類では,WNT-activated,SHH-activated and TP53-mutant,SHH-activated and TP53-wildtype,non-WNT/non-SHH(Group 3,Group 4)に分類する,“Medulloblastomas,genetically defined”が新たな分類として採用されました。
この分子分類を用いた新たなリスク分類として,亜群分類,TP53変異,MYC/MYCN増幅,11番染色体(chromosome 11:Chr11)欠失,転移の5項目に基づき,生存率>90%の低リスク(WNT:16歳未満,Group 4:転移なしかつChr11欠失あり),生存率75~90%の標準リスク(SHH:TP53変異なしかつMYCN増幅なしかつ転移なし,Group 3:MYC増幅なしかつ転移なし,Group 4:転移なしかつChr11欠失なし),生存率50~75%の高リスク(SHH:転移ありあるいはMYCN増幅あり,Group 4:転移あり),生存率50%未満の超高リスク(SHH:TP53変異あり,Group 3:転移あり)に分類する,乳幼児を除く小児髄芽腫のコンセンサスリスク分類が提唱されています2)。また,欧州を中心に実施されたHIT-SIOP PNET 4試験の後方視的解析から,高リスク因子(転移,large-cell/anaplastic,MYC増幅)を認めないnon-WNT/non-SHH髄芽腫に関して,whole chromosomal aberration(Chr 7増加,Chr8欠失,Chr11欠失のうち2つ以上の異常を有する)という特徴を認める症例の予後が非常に良好であることが報告されています3)。
残り685文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する