霰粒腫は眼瞼の瞼板内にあるマイボーム腺の慢性肉芽腫性炎症である1)。病理組織学的には脂質に対する異物肉芽腫性炎症の像を呈するが,成因は不明である。霰粒腫は非感染症であるが,感染症である麦粒腫との鑑別が難しいことがある。小児から高齢者まであらゆる年齢層にみられる頻度の高い疾患である。
霰粒腫は瞼板内に発生するが,瞼板内に限局しているもの(限局型)と,瞼板前面を破壊し,眼瞼前葉にまで炎症が及ぶもの(びまん型)の2つのタイプがある1)。限局型の場合,発赤,疼痛,圧痛はなく,皮下に可動性のない腫瘤として触知される(図1)。限局型が霰粒腫の典型的な臨床像である。一方,びまん型は,眼瞼前葉に炎症が及ぶため,皮膚が発赤し,軽度の圧痛がある(図2)。小児の霰粒腫は,瞼板や皮膚が脆弱なためびまん型になりやすく,皮膚が自壊することがある。霰粒腫は通常,瞼結膜側には隆起はないが,時に瞼結膜側に破裂し,ポリープ状の肉芽組織を生じることがある。
びまん型の霰粒腫の場合,皮膚が発赤し,麦粒腫との鑑別が難しくなる。両者の鑑別が難しいとき,診断的治療として,まずは抗菌薬を投与する1)。抗菌薬の投与で改善がみられない場合は,霰粒腫やその他の疾患の可能性を考える。
霰粒腫と鑑別すべき疾患には,脂腺癌,脂腺腺腫,類表皮囊胞(アテローム,粉瘤),瞼板内角質囊胞(マイボーム腺囊胞)などがある1)。特に高齢者の場合,脂腺癌との鑑別が重要である。脂腺癌は黄白色で結節状を呈することが多く,触診で硬い。また,霰粒腫と異なり瞼結膜に隆起性変化を伴うことが多い。腫瘍細胞が上皮細胞層を置き換えるように増殖(pagetoid spread)することがあり,眼瞼炎や結膜炎のような所見を呈することもある。
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