No.5042 (2020年12月12日発行) P.12
西 智弘 (川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター/一般社団法人プラスケア代表理事)
登録日: 2020-12-10
最終更新日: 2020-12-09
SUMMARY
厚労省を中心に,「社会的処方」を制度化していく流れがある中で,私たちが取り組むべきは「『社会的処方』を文化にしていく」ということ。医療者もその地域に暮らす住民のひとりとして,一緒にまちをつくっていくという姿勢が必要である。
KEYWORD
コミュニティコネクター
まちの中で暮らす普通のおじちゃん・おばちゃんが「これがこの町のためになるんだろう?」として立ち上がり,孤独を解消し,町全体を盛り上げてくれる姿。日本にもこういう方々はたくさんいる。
PROFILE
2005年北海道大学卒。家庭医療,緩和ケア,腫瘍内科を学び,川崎市立井田病院にて抗癌剤治療から在宅診療まで手掛ける。2017年一般社団法人プラスケアを設立し,暮らしの保健室や社会的処方研究所を運営する。
POLICY・座右の銘
病気になっても安心できるまちをつくる
2020年6月1日,自民党の「明るい社会保障改革推進議員連盟」から政府に向けて報告書が提出された。その報告書の中で,これからの人生100年時代における健康づくりをめざしていく3本の柱として,予防・健康づくりに関する大規模実証事業の推進や保険者機能の発揮・強化とともに「社会的処方」の推進が挙げられた。
筆者も,この報告書の作成に際し意見を申し上げたが,その中でも重要なのが「『社会的処方』を文化にしていく」という視点だった。報告書には,「かかりつけ医等が,患者の健康面に加えて社会生活面の課題にも目を向け,地域社会における様々な支援へとつなげることによって健康面と社会生活面の支援が一体的に実施されるとともに,地域社会も,その地域の人が自然と健康になれる環境になっていく。個々人からすれば,日々抱える漠然とした不安に寄り添い,解消することにもつながるものであり,この際,医師のみならず多様な職種が当該取組みに関与することが重要である」と記載され,制度として医師が一方的に地域に丸投げするのではなく,多様な職種が関わって「自然と健康になれる環境」ができていくことのニュアンスが込められている。