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ドライアイ[私の治療]

No.5044 (2020年12月26日発行) P.42

島﨑 潤 (東京歯科大学市川総合病院眼科教授)

登録日: 2020-12-27

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  • ドライアイの定義は2016年に改定され,「ドライアイは,さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障害を伴うことがある」とされた。併せて診断基準の改定も行われ,①眼不快感,視機能異常などの自覚症状,②涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下,の双方を有するものがドライアイと診断されることとなった。

    ▶診断のポイント

    以前と比べて,ドライアイの本態が涙液層の不安定性にあることが明確に示された。涙液量の減少や角結膜上皮障害の有無は診断基準からは外れたが,ドライアイをもたらす原因を探る目的での重要性には変わりはない。また,以前提唱されていた「ドライアイ疑い」という範疇は今回の改定では省かれた。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    全体的な方針としては,ドライアイの病型別に治療法を選択する。特に,涙液層のどの部分を補うべきかを判断し,それに対応した治療を行う。ドライアイの病型としては,「涙液減少型ドライアイ」「蒸発亢進型ドライアイ」「水濡れ性低下型ドライアイ」の3型にわけることが提唱されている。ドライアイの重症度分類は,わが国では正式に定められたものはないが,臨床の場では自覚症状の強さと角結膜上皮障害の程度で判定されることが多い。特にシェーグレン症候群などの涙腺破壊を伴う例では,重症のドライアイを生じることが多い。

    実際には,点眼治療が主に用いられる。わが国ではドライアイ治療薬としては,人工涙液(OTCとして販売されているものが多い),ヒアルロン酸製剤,ジクアス®点眼液3%(ジクアホソル),ムコスタ®点眼液UD2%(レバミピド)が発売され,時にはステロイド点眼や自己血清点眼が使用されている。

    人工涙液は生理食塩水をベースとした点眼薬で,含まれる添加物や防腐剤によって多くのものが市場に出回っており,涙液水層の補充を目的としているが,数分程度で眼外に排出されてしまうため,効果は一時的である。頻回点眼を必要とする例では,防腐剤を含まないものを使用することが望ましい。ヒアルロン酸製剤は,保水効果を有するため眼表面に比較的長くとどまるとともに角結膜上皮の修復作用があり,ドライアイに伴う上皮障害に有効とされる。ジクアホソルは,2010年に発売されたドライアイ治療点眼薬で,P2Y2受容体に作用し,結膜上皮からの水分産生と杯細胞からのムチン放出を促す 。またレバミピドは,胃粘膜保護作用を有する内服薬として長い歴史を持つ成分をドライアイに応用した点眼薬で,2012年に発売された。ムチンを産生する杯細胞を増やすとともに,角結膜上皮の保護,抗炎症作用を持つ。

    欧米においては,ドライアイの治療にシクロスポリンなどの抗炎症薬を用いることが多いが,わが国ではドライアイ治療薬としては認められておらず,炎症が強い症例では低濃度のステロイド点眼を併用することがある。その他,市販薬ではないが,重症ドライアイに対しては,患者の自己血清(通常20%に薄めて使用する)点眼を使用することがある。また,高度の涙液分泌低下を伴う例に対しては,涙点プラグ,涙点閉鎖によって眼表面からの涙液の排出を抑えて涙液貯留量を確保する治療が行われる。

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