眼精疲労は目の病的な疲労であり,休息によっても容易に回復しないのが特徴である。眼痛,目の奥の重さ,充血や視蒙感,乾燥感など目の症状のほかに,頭痛や肩こり,眩暈などの全身症状を伴う。
眼精疲労は屈折性・調節性眼精疲労と,ドライアイなど眼疾患による見づらさが原因となる症候性眼精疲労にわけられる。発症には,パソコン等の端末(visual display terminal:VDT)を用いた作業や冷暖房などによる刺激等の外環境要因や視器要因,内環境要因・心的要因(人間関係や仕事へのプレッシャー)が関与する。
眼精疲労発症の背景を探るには問診が重要である。デジタルデバイス機器の種類,使用時間や使用環境(冷暖房や照明),連続作業時間や休憩時間,視距離,近業時の眼鏡使用の有無について聞き出す。パソコンではディスプレイとの視距離が50cmと長く,視角も大きい。さらにディスプレイとキーボード,紙媒体の3点間を視線移動させるため,調節反応と調節解除を繰り返し行う。近年,急速に普及しているスマートフォン(以下,スマホ)では視距離が20~30cmと短く視角が小さいために,同じ視距離で画面を見続けてしまうことから,調節反応への負担が大きい。また,液晶ディスプレイにはLEDライトが使用され映像がきれいに見えるが,室内照明の映り込みが眼精疲労を誘発させる。
眼科検査では屈折異常や眼位異常,近見反応時の調節・瞳孔・輻輳反応を確認し,普段から装用している眼鏡やコンタクトレンズ(CL)での遠見視力と近見視力測定を行う。また,眼鏡やCLによる近視の過矯正や遠視の低矯正,乱視の未矯正がないか確認する。遠視患者では,若い頃から視力がよいために目は問題ないと思い込みやすく,眼鏡装用に対する心理的抵抗が強い傾向がある。遠視患者が近業に従事すれば,近方視だけでなく遠方視時にも調節努力を強いられるため,眼精疲労が生じやすい。
VDT作業では瞬目回数は減少し,不完全瞬目が増加してドライアイが生じやすい。中でもBUT(涙液層破壊時間)短縮型ドライアイは,角膜上に形成される涙液層の破壊や,瞬目時の涙液の厚みの変化によって高次収差が増加し,その代償機転として生じる調節過多によって眼精疲労が誘発される1)。
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