眼球の中でも前眼部の虹彩および毛様体に限局したぶどう膜炎で,後眼部の脈絡膜には炎症が生じていないものである。解剖学的病名であるので,ぶどう膜炎の原因疾患については問わない。
毛様充血がみられ,前房に炎症細胞の浮遊がみられるが,後眼部の網膜,脈絡膜には炎症所見がみられないことを確認する。虹彩毛様体炎(ぶどう膜炎)の原因について必要に応じて精査する。日本での三大ぶどう膜炎疾患であるサルコイドーシス,ベーチェット病,Vogt(フォークト)-小柳-原田病でも虹彩毛様体炎はみられるが,これらは後眼部の脈絡膜にも炎症を生じて汎ぶどう膜炎の病状を呈することが多い。
虹彩毛様体炎は軽いものから重症なものまで程度に差がある。炎症の程度に合わせた点眼薬による治療が基本となる。点眼治療は消炎のためのステロイド点眼薬と,虹彩後癒着の予防・解除のための散瞳点眼薬による治療である。ステロイド点眼薬としては,0.1%フルオロメトロン点眼薬では眼内移行性に乏しいため,0.1%ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼薬(リンデロン®)が用いられる。前房炎症の程度に合わせて1日1回~1時間ごと(日中16回)で用いる。散瞳点眼薬は主にトロピカミド・フェニレフリン配合点眼薬(ミドリン®P)が用いられる。虹彩後癒着の予防として用いる場合には1日1~6回とする。
点眼薬のみでは炎症のコントロールが難しい重篤な症例では,点眼薬に加えてステロイド結膜下注射が行われる。通常,即効性の高い水溶性ステロイドのデキサメタゾン(デカドロン®)が用いられる。
虹彩毛様体炎では恒久的な視力障害に至ることがないので,一般的にはステロイド内服薬を用いることはないが,急性前部ぶどう膜炎など疼痛を伴う重篤な虹彩毛様体炎の症例ではステロイド内服薬を用いることもある。
虹彩後癒着が既に生じていて,それが癒着形成から間もない新鮮な虹彩後癒着である場合には,消炎治療と並行してその解除を試みる。陳旧性の虹彩後癒着は点眼薬治療では解除できないので,そのまま経過をみる。虹彩後癒着が全周に及ぶと瞳孔ブロックによる著明な高眼圧を呈し,充血,視蒙感,眼痛,頭痛,嘔気を生じる。その場合,緊急の処置・手術が必要となる。
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