【遺伝子異常が治療標的となりうる可能性に注目】
中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma:PCNSL)は脳内に原発する悪性リンパ腫で,ほとんどの症例はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病理形態を示し,全脳腫瘍の約3%を占める希少疾患であり,60歳代が発症年齢のピークである1)。
初発症状は,頭痛などの頭蓋内圧亢進症状,認知機能障害,麻痺などの運動障害が多く,進行速度が速い1)。CTやMRIなどの画像所見上は悪性神経膠芽腫,転移性脳腫瘍や非腫瘍性病変(多発性硬化症など)との鑑別に苦慮することが多く,確定診断には生検が必須である1)。全摘出しても根治することはなく,大量メトトレキサートを投与した後に全脳の放射線治療を行う方法が治療の主体となっている。5年生存率が約30%前後であり,全身性に発症する悪性リンパ腫と比較すると予後不良である2)。
一方で,いくつかの遺伝子異常が治療標的となりうる可能性があり,注目されている。たとえば,B-cell receptor/NF-κBシグナル活性化に関わる変異が90%近くの割合で認められており,こちらを標的とする薬剤の開発が進められている2)。
PCNSLに対するゲノム解析技術の進歩と,それに基づいた病態の解明が,さらなる治療法の開発に結びつくことが期待される。
【文献】
1) Chiavazza C, et al:Biomed Res Int. 2018;2018: 3606970.
2)Hattori K, et al:Br J Haematol. 2017;177(3): 492-4.
【解説】
服部圭一朗 筑波大学附属病院血液内科