【未熟児網膜症に対する抗VEGF薬硝子体内注射の新たな治療選択肢の可能性】
未熟児網膜症(ROP)は未熟な網膜血管を基盤に発症する眼内血管新生病である。
ROPの治療は無血管野に網膜光凝固を行い,網膜剝離への進展を予防することである。近年,ROPの病態に血管内皮増殖因子(VEGF)が関連していることから,抗VEGF薬の硝子体内注射が行われるようになった(保険適用外)。
抗VEGF療法の利点は,高い即効性および光凝固のように眼底観察下でなくても治療が行えることである。そのため,散瞳不良により眼底透見不良な症例や急激に進行する劇症型ROPでは有効な選択肢となる。抗VEGF薬硝子体内注射と光凝固の有効性を比較した前向き無作為化比較試験1)では,zone1 ROPでは硝子体内注射が有効であった。
抗VEGF療法の問題点は,投与後も増殖が再発する可能性があること,投与後の血管伸長が正常児と比べて遅延することである。そのため,光凝固と比較して,治療後もより長期に診察が必要となる。また,VEGFは生理的な成長に必要であるが,硝子体内注射後も全身のVEGF抑制効果を約8週間有することが報告2)されており,薬剤による発達への影響が懸念されている。現在では副作用についてまだ不明な点が多く,使用にあたっては慎重に適応を選択する必要がある。
【文献】
1) Mintz-Hittner HA, et al:N Engl J Med. 2011; 364(7):603-15.
2) Wu WC, et al:JAMA Ophthalmol. 2015;133(4): 391-7.
【解説】
三木明子 神戸大学眼科