全身諸臓器に非乾酪性類上皮肉芽腫をつくる疾患であり,特に肺門縦隔リンパ節,肺,眼,皮膚の罹患頻度が高い。経過中に神経,筋,心臓,腎臓,肝臓などの様々な臓器に所見が出ることがあり,その臨床症状や経過は多彩である。眼病変は中高年女性に多く,肉芽腫性汎ぶどう膜炎を呈し,慢性の経過をたどることが多い。
診断は,組織診断群と臨床診断群にわけられる。臨床診断は,肺病変,眼病変,または心臓病変のうち2臓器以上の病変があり,両側肺門縦隔リンパ節腫脹などの検査項目のうち2項目以上陽性であることが必要である。
前眼部病変では,豚脂様角膜後面沈着物や虹彩結節,隅角結節やテント状周辺虹彩前癒着,後眼部病変では,塊状硝子体混濁,血管周囲に小結節を伴った網膜静脈周囲炎,蠟様網脈絡膜滲出斑,網脈絡膜萎縮病巣がみられる。頻度は低いが,視神経乳頭肉芽腫や脈絡膜肉芽腫も特徴的である。
治療の原則は,不可逆的な眼組織障害による視機能障害を防止することであり,主に副腎皮質ステロイドによる対症療法を行う。治療の適応は,炎症の程度や発生部位に応じて決定する。前眼部に限局した炎症や,前眼部病変に加えて,視機能に影響を与えない程度の軽度の硝子体混濁や後眼部病変では,ステロイド点眼薬および散瞳点眼薬で加療する。
上記で消炎が得られない場合,特に,不可逆的な視機能障害をきたしうる眼内炎症(①局所治療に抵抗する重篤な前眼部炎症,②高度の硝子体混濁,③広範な滲出性網脈絡膜炎および網膜血管炎,④網膜無血管領域を伴わない網膜あるいは視神経乳頭新生血管,⑤黄斑浮腫,⑥視神経乳頭炎/視神経乳頭肉芽腫,⑦脈絡膜肉芽腫)に対しては,ステロイドの後部テノン囊下注射または内服で加療する。どちらを使うべきかは個々の症例に合わせて検討するが,ステロイドリスポンダー,両眼性の後眼部病変には後部テノン囊下注射より内服を選択する。内服漸減中,プレドニゾロン換算で15mg/日以下になると炎症が再燃しやすいので,漸減速度を遅くすることが勧められる。再燃した場合は,後部テノン囊下注射を追加で行うか,ステロイドを増量する。ステロイドの効果が十分に得られない場合や,副作用によって継続投与が困難な場合には,免疫抑制薬や生物学的製剤の導入を考慮する。これらの全身治療前には感染症(結核やB型肝炎など)や耐糖能異常の有無を調べ,治療中における副作用発現に注意する。
一方,眼底周辺部に限局したごく軽度の病変(硝子体混濁,網膜血管炎,網脈絡膜炎など),または眼内炎症が治療や自然経過により消炎した場合は,無治療で定期的な経過観察を行う。
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