眼内腫瘍(intraocular tumor)の初発症状は,小児は白色瞳孔や斜視,成人は飛蚊症や視力低下である。すべての病変が希少疾患の範疇であり,原発性腫瘍は網膜(神経網膜,網膜色素上皮),ぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜),視神経乳頭から生じるが,過誤腫や転移性腫瘍の頻度も高い。代表的な悪性腫瘍は,網膜芽細胞腫,眼内リンパ腫,脈絡膜悪性黒色腫,転移性脈絡膜腫瘍である。良性腫瘍は,血管奇形(血管腫),母斑や骨腫などの過誤腫などで,進行性の視力低下の原因となりうる。
診断は眼底検査と眼底画像検査,および生化学検査,遺伝学的検査,放射線学的検査などにより,総合的に診断する。
親や小児科医が白色瞳孔と斜視に気づいて診断される。眼底に白色腫瘤があり,高頻度に網膜剝離や石灰化を伴う。視神経浸潤の有無は生命予後を左右するため,造影MRI検査を行う。全症例の2/3が2歳未満発症,片眼発症である。両眼性発症児はRB1遺伝子の生殖細胞変異を伴い,より若年で発症する1)。臨床所見から確定診断可能である。患児のみ遺伝子検査の保険適用がある。
脳と眼内に原発する網膜硝子体リンパ腫,全身リンパ腫の浸潤による脈絡膜リンパ腫に分類できる。原発性網膜硝子体リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫であり,ぶどう膜炎様所見,硝子体手術による腫瘍細胞の細胞診,フローサイトメトリー,IgH遺伝子再構成と,眼内液のインターロイキン(IL)比(IL-10/IL-6比>1)などを参考に確定診断する2)。
眼底の脈絡膜メラノサイトの悪性腫瘍である。網膜下のマッシュルーム状もしくはドーム状,稀にびまん性に発育した色素性腫瘤となる。超音波眼底検査で低反射,123I-IMP SPECTの24時間像で集積がみられる。臨床所見から確定診断可能である。
男女ともに有病率の高いがんに生じるが,消化器がんの頻度は低い。約1/4の例でがんの既往歴がなく,脈絡膜転移を機に原発巣が発見される。眼底後極に単発/多発する灰白色ドーム状脈絡膜腫瘍と網膜剝離が生じる。眼科的検査と全身検査でほぼ確定できるが,原発不明がんや多重がん,重複がんでは針生検を行う。
生命予後に最も配慮しながら,可能であれば機能や整容を最大限に温存する。眼球を温存しながら根治できるかどうかから戦略を組み立てる。治療の選択肢は手術(眼球摘出,局所切除),放射線治療(各種外照射,小線源療法),化学療法(全身,選択的眼動脈注射,硝子体内注射),眼科的治療(レーザー,冷凍凝固など)である。
残り1,412文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する