成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)は,ヒトT細胞白血病ウイルス(human T-cell leukemia virus type-1:HTLV-1)に感染したTリンパ球が腫瘍化する予後不良な造血器腫瘍である。治療の観点から,早急な化学療法を必要とするaggressive ATLと,経過観察が主となるindolent ATLに大別される。HTLV-1は,ATL以外にHTLV-1関連脊髄症・熱帯性痙性麻痺,HTLV-1関連ブドウ膜炎などの病因でもある。
HTLV-1は,主に母乳と性交を介して,それぞれ母親から新生児へ,男性から女性へ感染する。日本には現在80万~90万人のHTLV-1キャリアが存在する。ATLの発症はHTLV-1キャリアの3~5%に限られており,大多数の感染者は,生涯にわたって無症候性のキャリアである。
ATLの家族歴を有することが多い。
aggressive ATLでは,発熱,皮疹,リンパ節腫大,肝脾腫などの症状を呈し,末梢血では核の切れ込みや花弁状核などの特有な核変形を示すリンパ球数が増加する。高カルシウム血症やそれに伴う腎不全,細胞性免疫低下に伴う食道カンジダ症,ニューモシスチス肺炎を伴うこともある。
indolent ATLは無症状のことが多く,健診を含め,たまたま行われた血液検査の際に指摘された白血球数の上昇,異型リンパ球の出現を契機に,あるいは皮疹のために皮膚科を受診した際に診断されることが多い。
aggressive ATLは,診断後直ちに多剤併用化学療法を行う1)。年齢,全身状態,臓器障害の程度を考慮し,実施可能な症例では,なるべく早期に治癒的治療法である同種造血幹細胞移植を実施する。同種移植により,20~40%に長期生存が期待できる。移植困難例では,抗CCR4抗体であるモガムリズマブ投与により,生存期間の延長が期待できる。
indolent ATLは,aggressive ATLに移行するまで経過観察を行う1)。皮膚病変が存在する場合,副腎皮質ステロイド外用や局所放射線療法などの,皮膚指向性治療を行う。これらの治療は皮膚局所の症状緩和には有効であるが,生存期間の改善に貢献するかに関しては不明である。
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