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ぶどう膜炎[私の治療]

No.5057 (2021年03月27日発行) P.45

園田康平 (九州大学大学院医学研究院眼科学分野教授)

登録日: 2021-03-29

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  • ぶどう膜とは,虹彩・毛様体・脈絡膜の総称である。ぶどう膜は血管膜であり,眼球に血流をもたらす生理的に重要な組織である。多くの自己免疫疾患・自己炎症性疾患は,ぶどう膜を介して眼炎症を惹起する。また,感染症やがんなどが眼に転移するのもぶどう膜である。ぶどう膜炎は単一の疾患ではなく,様々な病態によって表現型として生じた「眼内炎症の総称」である。ゆえに「ぶどう膜炎」というだけでは不十分で,その原疾患が何かを鑑別する必要がある。

    ▶診断のポイント

    初診時には複数の鑑別を挙げた上で,原疾患を絞り込む。1~2回の診察で診断がつくことは少なく,数回の診察の間に検査結果が出そろい,原疾患確定に近づく。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    必要な検査項目を漏らさぬよう,あらかじめ「検査用採血セット」を作成しオーダーする。検査項目は主に①全身状態把握,②感染症スクリーニング,③全身炎症性疾患のスクリーニング,というように明確な指針を持ってカテゴリーを組み立てる。ステロイド全身投与前に必要な内因性コルチゾール,B型・C型肝炎などの感染症検査なども,忘れないように検査セットに組み入れておく。

    「検査用採血セット」はあくまでもスクリーニングであり,これのみで診断がつくことはむしろ少ない。たとえば梅毒検査が陽性であっても,臨床症状や眼科検眼鏡所見と検査結果が合致しない場合は梅毒性ぶどう膜炎とは診断できない。眼科所見に加え,胸部X線検査,ツベルクリン検査,髄液検査などと組み合わせ,総合的に判断する。

    眼内液を用いる検査法も重要である。目的は眼内液中に含まれる液性因子濃度測定,抗体価の測定,病原体の同定,浸潤細胞の細胞診等で,前房水・硝子体液採取が臨床の様々な場面で行われる。ステロイド抵抗性ぶどう膜炎で,感染症や悪性腫瘍の眼内浸潤を疑ったときなど,診断確定のため早急に行う必要がある。近年,少量の検体から網羅的かつ定量的に病原体を同定できるマルチプレックスPCRが開発されている。こうした生体検査の発達により,今後診断率向上が期待される。

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