No.5060 (2021年04月17日発行) P.60
川口篤也 (函館稜北病院総合診療科科長)
登録日: 2021-04-02
最終更新日: 2021-04-02
新型コロナウイルスが日本で流行してから2回目の春がやってきた。流行当初より病院のICT(感染対策チーム)のメンバーは、この感染症に関しての情報収集、院内感染対策マニュアル作成、職員への周知、日々変わる状況に合わせての感染対策レベルの変更等、職員、患者を守るために精力的に仕事をしてきたと思われる。特にマスク、ガウンなどの材料が不足していた1年前には、限られた医療材料でどのように感染から身を守るかに頭を悩ませ、又いざ自院で感染者が出た場合には、濃厚接触者の洗い出し、検査、保健所との連絡、臨時の会議等々、休むまもなく働いていただろう。しかし、感染症への不安の矛先がICTに向かい、厳しい批判や心ない発言を受けたことも多かったのではないだろうか。
保健所もPCR検査体制が十分ではない時期から、どうして検査をしてくれないんだと批判にさらされ、クラスターが発生すると追跡に膨大な時間を割かれながらも数々のお叱りを受け、ほとんど感謝もされずに身を粉にして働いて来た人もいるのではないだろうか。
もちろん対策の不備に対して批判することは必要であるし、実際うまく機能していなかったり、コミュニケーションに問題を抱え、それに対して批判が起こったことも多々あると思われる。ただ中には、家族以外と食事に行っていいか決めてくれないと困るなど、自分で考えて行動すべきことまで求められることもあるようだ。我々医療者は感染対策を「他律ではなく自律として」、自分ごととして考えて行動するのかが問われている。
ワクチン接種が拡がるまではまだ時間がかかりそうで、再びICTや保健所の仕事は残念ながら増えそうである。全国のICTや保健所の人達にまずは感謝とエールを送りたい。それらに加え、コロナ患者を直接診療している人、間接的にサポートしている人、感染対策に気をつけて生活しているすべての医療従事者、住民に感謝と労いの気持ちをもって今日も手を洗いたいと思う。
川口篤也(函館稜北病院総合診療科科長)[新型コロナウイルス感染症]