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再生不良性貧血[私の治療]

No.5060 (2021年04月17日発行) P.42

山﨑宏人 (金沢大学附属病院輸血部長,病院臨床教授)

登録日: 2021-04-16

最終更新日: 2021-04-13

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  • 何らかの原因で骨髄の造血幹細胞が持続的に減少した結果,最終的には汎血球減少を呈する症候群である。大部分の患者では,免疫学的機序が発症に関与している。新規発症者数は年間約8人/100万人と推定されており,医療費助成が受けられる指定難病のひとつである。

    ▶診断のポイント

    貧血,出血傾向,発熱が三大症状であるが,急性型では発熱や出血傾向が先行し,貧血はむしろ軽度である。一方,ゆっくり進行する慢性型では高度の貧血を認めるにもかかわらず,自覚症状の乏しい例が多い。

    Hb10g/dL未満,好中球1500/μL未満,血小板10万/μL未満のうち,少なくとも2つ以上を満たし,骨髄が低形成で,汎血球減少をきたす他の疾患が除外されれば,再生不良性貧血と診断する。免疫病態が関与した再生不良性貧血は,貧血や白血球減少の出現より血小板減少が先行していることが多いので,診断時に血小板数が10万/μL以上の場合は,他の疾患を慎重に鑑別する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    免疫抑制療法や同種骨髄移植といった造血回復をめざした治療と,輸血・G-CSF投与・鉄キレート療法などの症状緩和をめざした支持療法がある。どの治療法を選択するかは,網赤血球数・好中球数・血小板数の3つを指標とした重症度と年齢に病態を加味して決める。たとえ輸血を必要としない例であっても,経過観察とはせずに,早期診断・早期治療を心がける。

    【造血回復をめざした治療】

    輸血を必要としないstage 1およびstage 2a例では,血小板輸血を必要とする抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(ATG)の投与は推奨されない。また,同種骨髄移植の適応もない。血小板数が10万/μL未満ならシクロスポリン(CsA),10万/μL以上なら蛋白同化ステロイドを第一選択薬とする。反応が乏しい場合は,エルトロンボパグ(EPAG)を追加してもよい。stage 2b以上では,ATG+CsA±EPAG±G-CSF併用による免疫抑制療法か同種骨髄移植が選択される。難治例にはロミプロスチム(ROMI)を追加してもよいが,EPAGとの併用はできない。

    【支持療法】

    貧血症状を伴う場合は,Hb値6~7g/dL程度を保つように赤血球輸血を行う。出血傾向を伴う場合は,血小板数5000~1万/μL程度を保つように血小板輸血を行う。好中球数が500/μL未満で重症感染症合併のリスクが高い例や,実際に合併している例では,G-CSF投与を考慮する。頻回の赤血球輸血による輸血後鉄過剰症例では,輸血総量とフェリチン値を指標に鉄キレート薬であるデフェラシロクスを併用する。

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