正確な意識レベルの評価,瞳孔不同,片麻痺などの脳ヘルニア徴候を的確にとらえ重症度評価を行う。確実な初期診療により,低酸素血症や高二酸化炭素血症,低血圧などを回避し,付加的に生じる二次的脳損傷を回避する。頭蓋内圧亢進や脳ヘルニア所見がみられる場合は迅速に対応する。
一般的なAMPLE Historyの聴取は必須である。「どのように受傷したか」「目撃者の有無」「先行する意識障害の有無」など,特にE(event)について詳細に周囲や救急隊から聴取する。特に交通外傷に伴う場合はヘルメットやエアバッグ作動の有無,フロントガラスの破損など,ハイリスク受傷機転を判断すべく情報収集を怠らない。また,緊急手術に備え,最終飲食時間はもちろんのこと,抗凝固薬や抗血小板薬の内服の有無の確認は必須である。
初期診療は常に「ABCDEアプローチ」を基本とし,バイタルサインを揺るがす損傷の有無を確認する1)。気道は開通しているか(A:airway),呼吸は保たれているか(B:breathing),体循環は満ちているか(C:circulation)を確かめた後,神経学的評価(D:dysfunction of central nervous system)を行う。さらには全身観察と体温管理(E:exposure and environmental control)を行う。上記観察でバイタルサインを揺るがす病態を認知し,同時に蘇生治療を行うことで,まずは生命の危機を回避する。バイタルサインの安定の後に頭部CTなどを精査するのが原則である。Dでは,瞳孔所見,意識レベル,片麻痺の有無など,神経学的脱落所見を観察する。グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)8点以下,GCSが経過中2点以上の低下,瞳孔不同,片麻痺の存在,クッシング徴候(高血圧や徐脈)などは,頭蓋内圧亢進所見や脳幹圧迫所見,いわゆる切迫する脳ヘルニアを想起させる重症頭部外傷の所見であり,これらを認めた場合は患者病態の重症度,緊急度がともに高くなる。
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