高山病は,2400m(8000フィート)以上の高度へ急速に上昇したときに生じる一群の急性症候群の総称である。高山病には,脳を障害する急性症候群として,急性高山病(acute mountain sickness:AMS)と高地性脳浮腫(high altitude cerebral edema:HACE)があり,肺を障害する急性症候群には,高地性肺水腫(high altitude pulmonary edema:HAPE)がある。
高山病は,発症を予防することが大事である。まず危険因子を把握し,適切な予防によって回避できる。しかし,発症後は急速に重篤化することがあるため,早期に症状に気がつき,対応および治療を開始することが重要である。
発症頻度は若年者で比較的高い。一度発症すると繰り返して発症する例が多い。性差や登山経験,荷物の重さとの関連は認められていないが,重症度については,若年ほど,到達高度が高いほど,到達速度が速いほど重症の傾向にある。特定の危険因子としては,①以前の高山病の既往,②1000m(3300フィート)以下の低地の居住者,③激しい運動,④既存の心肺疾患,がある。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系に関するアンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子多型について多く報告があり,遺伝的素因が関与すると考えられている。
高地順応のため数日以上かけてゆっくり高度上昇することで,AMSのリスクは減少する。予防投薬を行うことでAMSの症状を回避することができる。
一手目 :ダイアモックス®250mg錠(アセタゾラミド)1回0.5錠1日2回(朝・夕食後),高地に登る前夜に開始し2~3日継続
二手目 :〈アセタゾラミドに不耐性や過敏症がある場合〉デカドロン®4mg錠(デキサメタゾン)1回1錠1日2回(朝・夕食後),高地に登る前夜に開始し2~3日継続
診断や重症度の判定にレイクルイーズスコア(2018 Lake Louise Acute Mountain Sickness Score)が一般的に用いられる。直近の高地到達下で,①頭痛,②胃腸症状,③疲労・脱力,④めまい・ふらつき,の4つの症状を0~3点で評価し,4症状のうち①頭痛の存在は必須で,合計3点以上がAMSと定義されている。
直近の高地到達下で,AMSがあって精神状態の変化および/または運動失調を呈するもの。またはAMSはないが,精神状態の変化と運動失調の両方を呈するものを言う。
直近の高地到達下で,①安静時呼吸困難,②咳嗽,③運動能力の減退,④胸部圧迫感・充満感,のうち,少なくとも2つの症状があり,かつ⑤少なくとも1つの肺野での副雑音,⑥中心性チアノーゼ,⑦頻呼吸,⑧頻脈,のうち2つの徴候を呈するものを言う。
残り1,329文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する