多くの自然毒には拮抗薬は存在しない。そのため,呼吸・循環を中心とした全身管理,対症療法が中心となる。
何を摂取したかによって,中毒症状や症状の発現時期も異なるため,摂取した食べ物の同定が重要である。
臨床症状や作用機序別により,悪心・嘔吐,下痢などを起こす「消化器障害型」,主に神経症状や知覚異常を起こす「神経障害型」,消化器症状とともに肝・腎障害や溶血,循環障害を起こす「原形質毒性型」に分類される。
一般的に,症状の発現が比較的短期間(3時間以内)であるものは軽症,長い潜伏期間(6時間以上)であるものは重症と言われている。
フグ毒による中毒症状は⾷後20分~3時間程度の短時間で現れる。重症の場合には呼吸困難で死亡することがある。中毒症状は臨床的に4段階にわけられる。
Ⅰ度:口唇部および舌端に軽いしびれ,四肢末端の感覚症状を認める。
Ⅱ度:不完全運動麻痺が起こり,知覚麻痺,言語障害も顕著になる。呼吸困難を感じるようになり,血圧降下が起こる。
Ⅲ度:全身の完全麻痺が現れ,骨格筋は弛緩する。血圧が著しく低下し,呼吸困難となる。
Ⅳ度:重症換気不全,低血圧,徐脈,意識障害が起こる。
摂取後30分~2日で消化器症状(腹痛,下痢,嘔吐)が,やや遅れて神経症状(めまい,温冷覚の異常,口唇周囲や四肢のしびれ感など)が出現する。典型例では,症状は2~3週間続く。
残り1,420文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する