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工業・家庭用品等による中毒[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.82

志賀光二郎 (新百合ヶ丘総合病院呼吸器外科医長/感染対策室室長,名古屋産業大学客員教授(臨床医学))

登録日: 2021-05-03

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  • 急性中毒における治療の原則は,第一に医療者の安全確保が重要である。手袋,ゴーグル,マスクおよびガウンをはじめとする個人防護具を装着し,製品・薬物への曝露を避け,患者の体液や吐物への接触を予防する。次に患者の治療として,バイタルサインの安定化,吸収の阻害,排泄の促進,解毒薬・拮抗薬の投与を考える。

    ▶病歴聴取のポイント

    ①製品・薬物の種類,量,摂取時間
    ②発見時の状況
    ③平時の使用状況
    職場をはじめとする現場では同僚などから,家庭では家族からも聴取する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    バイタルサインの把握する。不安定な場合は高次医療機関への転院搬送を考慮する。
    特に呼吸・循環が不安定な場合,また意識障害が高度な場合には気管挿管を行っておく。
    末梢ラインを確保し,心電図モニターおよび経皮的酸素飽和度(SpO2)モニターを装着する。必要に応じ酸素を投与する。
    症状や身体所見は非定型的であることが多い。頭から爪先まで入念に身体診察を行う。一方で,たとえばアセトンでは芳香臭,ニトロベンゼンでは靴磨き臭,など,特有の臭いを発する中毒物質があるので,臭いにも注意して診察する。

    【検査】

    血液検査,尿検査,心電図検査,胸部X線撮影を行う。たとえば,フッ化水素中毒では低カルシウム血症を生じうるので,血液検査や心電図検査が有用である。尿を採取することで中毒原因物質を推定・特定できる場合もある。化学性肺炎を考慮し,胸部X線を撮影する。
    意識障害や痙攣がみられる場合には,脳卒中をはじめとする内因性疾患との鑑別のために頭部CTを施行する。

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