大別すると急性中毒と慢性中毒にわけられる。急性薬物中毒は,医薬品や洗剤,殺虫剤,農薬などの化学物質を飲む・吸い込む,皮膚・粘膜からの吸収によって起こる。慢性薬物中毒は,依存による乱用や長期投与によって起こる。
原因物質が判明するまで治療を行わないというのではなく,中毒の臨床症状から起因物質を推定し,その中毒を念頭に置いた治療を開始する。重症例においては,呼吸・循環・体温・神経系の異常は生命予後や機能予後に直結するため,原則としてその管理を優先する。
・いつごろ,何を,どれぐらい飲んだか,発見時以降の症状等,できるだけ多くの情報を収集する。
・精神疾患系の既往歴の聴取は時に大切である。
・吐物,排泄物,空き箱,食べ残し,飲み残し,携帯電話やメール等が情報源となることもある。
・「ひとくち」は,成人で約40mLである。
・患者が意識不明の場合,聴取は困難である。
・自殺企図者では,服毒したことや薬毒物名を言わないこともある。
・毒キノコと知らずに食べた場合など,毒物を摂取したという認識がないことがある。
・幼児や認知機能の低下した高齢者など,情報取得が困難な場合もある。
・違法性のあるものを服用したときは正直に言わないこともある。
・呼吸数,脈拍数,血圧,酸素飽和度,意識レベル,体温,瞳孔をチェックする。薬剤によっては不整脈や痙攣を誘発するので,注意する。
・トキシドローム(toxic syndromeからの造語)から薬物の推測が可能である場合がある(表1)。
・重症度の判定には表2の点に注意する。最初は軽症にみえても重症化することも多い。
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