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【一週一話】鉄過剰症の病態と治療

No.4743 (2015年03月21日発行) P.53

加藤浩貴 (東北大学大学院医学系研究科生物化学分野)

五十嵐和彦 (東北大学大学院医学系研究科生物化学分野 教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-09

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  • 鉄は酸素運搬や電子伝達系,酸化還元反応などを担う,生体にとって必須の金属元素である。しかし,過剰の鉄はフリーラジカル産生などを介したDNA損傷や蛋白質変性などを惹起し,生体にとって有害にもなるため,生体は鉄を厳密にコントロールするために,たとえば鉄輸送体としてのトランスフェリンや細胞内貯蔵庫としてのフェリチンなどを有する。

    一方,生体には積極的な鉄排出機構はなく,血液疾患などにより輸血依存となった場合,容易に鉄過剰症となりうる(赤血球輸血量2単位当たり鉄を約200mg含む)。過剰な鉄は肝臓や心臓,内分泌臓器などに沈着し,肝硬変,心不全,糖尿病などの原因となる。

    鉄過剰症の治療は主に鉄キレート剤によるが,「輸血後鉄過剰症の診療ガイド」では,1年以上の余命が期待できる症例を対象とし,総赤血球輸血量40単位以上および連続する2回の測定(2カ月以上)で血清フェリチン値1000ng/mL以上を認めることを治療開始の目安とする,としている。

    骨髄異形成症候群において,少数例ではあるが鉄キレート剤による全生存率の改善や造血の回復などの報告もあり,有効性が期待される。鉄キレート剤には,近年経口製剤も上市され,治療の選択肢が広がってきている。

    しかし,鉄キレート剤にも肝機能障害や腎機能障害などが起こりうること,非常に高価であることなどから,実臨床においては考慮すべき課題もある1)

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