眼瞼内反症とは,瞼板が眼球側へ回旋し,眼瞼自体が内反している状態である。下眼瞼の垂直方向もしくは水平方向の弛緩が原因であり,加齢に伴い瞼板を支持する組織が弛緩して生じる退行性のものと,熱傷やStevens-Johnson症候群,眼類天疱瘡など,眼瞼後葉の短縮により生じる瘢痕性のものがある。
退行性下眼瞼内反症:加齢などの退行性変化により,眼瞼の水平方向もしくは垂直方向のlower eyelid retractors(LERs)の弛緩が生じることが原因である。
瘢痕性下眼瞼内反症:下眼瞼後葉の短縮が原因であり,軽度な場合はlid splitなどで改善が見込めるが,重度の場合は,後葉に対する硬口蓋粘膜などを使用した移植などが必要となることもあるため,専門医への紹介が望ましい。
細隙灯顕微鏡による前眼部の診察によって,眼瞼の内反の状態を確認する。瞼縁の位置や,睫毛の眼球への接触等を確認する。瘢痕性下眼瞼内反症に関しては,眼瞼結膜,眼球結膜の状態(どの箇所がどのように瘢痕形成し短縮しているか等)を確認する。
退行性下眼瞼内反症に対してはpinch test(下眼瞼を指でつまみ前方へ引き,眼瞼と角膜までの距離を診るもの)を行い診断する。
臨床上よく遭遇する退行性下眼瞼内反症,特に垂直方向のLERsの弛緩による内反症に対して一般的に用いられるのはJones変法(Kakizaki法)である。水平方向のLERsの弛緩には,一般的に眼瞼外反症の治療に用いられるlateral tarsal stripを施行すると改善する。一方,瘢痕性下眼瞼内反症に対しては,軽度のものはlid splitや睫毛内反症に用いるHotz変法等を合わせて施行し,重度の場合は硬口蓋粘膜の使用や,頰粘膜を移植する等の選択肢が用いられる。
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