キャッスルマン病は,1954年にB. Castlemanが8年の経過を有する巨大腫瘤を認めた40歳男性例を提示したのが1例目の報告である。その後,病理組織型としてhyaline vascular type,plasma cell typeの2型が存在すること,限局性病変のみならず多発性病変が存在することが報告されるようになり,限局型(unicentric Castleman disease:UCD),全身型(multicentric Castleman disease:MCD)の2病型にわけられることとなった。キャッスルマン病は非腫瘍性の反応性リンパ増殖性疾患であり,日本で最も多いのは,病因が不明の特発性MCD(idiopathic MCD:iMCD)である。
本稿は,「キャッスルマン病診療ガイドライン 令和2年度初版」1)を参照してまとめた。
リンパ節組織診断が重要である。キャッスルマン病の診断基準は表の通りとなっている。
限局性のリンパ節腫大を主症状とし,偶然に発見されるか,もしくは腫大リンパ節による重要臓器の圧迫症状で診断される。大部分の例がhyaline vascular typeの組織型を示すが,plasma cell typeを示す例も少数認められる。手術による切除で治癒させることが可能であり,plasma cell typeに伴うことの多い全身症状も改善する。
全身の炎症性の病態に伴う多彩な臨床症状を示すことが特徴で,よく認められる症状は発熱,盗汗,倦怠感,体重減少などである。腫大リンパ節で産生される過剰なIL-6に対応するものと考えられている。抗IL-6レセプター抗体であるトシリズマブ投与が主たる治療法であり,ステロイドも使用・併用されることがある。MCDには複数の病型が存在し,iMCD以外に,HIV陽性例に多いHHV-8関連MCD,POEMS症候群に合併するMCDがある。HHV-8関連MCDの治療ではリツキシマブが主に使用され,リポソーマルドキソルビシンやエトポシドなどが併用される。POEMS症候群合併MCDではPOEMS症候群に対する治療が行われる。
さらに,血小板減少thrombocytopenia(T),全身性浮腫anasarca(A),発熱fever(F),骨髄巨核球増加と細網線維増生または腎機能障害reticulin fibrosis or renal dysfunction(R),肝脾腫やリンパ節腫脹organomegaly(O)を伴い重篤な経過を示すTAFRO症候群は,リンパ節の病理組織がキャッスルマン病と合致する例を認め,MCDとの関連性が議論されている。TAFRO症候群を呈する例は急速な病態を示すが,現時点で十分なエビデンスのある治療法はなく,ステロイド大量療法,シクロスポリン,トシリズマブ,リツキシマブなどによる治療が行われる。
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