中心動脈の循環障害が基本で,これに糖尿病性神経障害が加わり,しばしば外傷,二次感染による外的要因をきっかけに潰瘍化する。急速に主幹動脈が閉塞すると壊死が起こる。
糖尿病患者に認める糖尿病性皮膚障害のうちで,慢性ないし進行性の潰瘍形成性あるいは壊死性の病変で,その基礎に糖尿病性神経障害,末梢動脈疾患あるいはその両者が存在するものを「糖尿病性潰瘍・壊疽」とする。これらのうちで可逆性の変化を「糖尿病性潰瘍」とし,壊死性で非可逆性変化に陥ったものを「壊疽」と定義する。
四肢冷感,肢端紫藍症,神経痛様疼痛,知覚麻痺に引き続き,足趾・足底・手掌に紅斑,水疱が現れ,ついで境界明瞭な壊死巣が生じ,潰瘍化して難治となる。
創傷治癒には,糖尿病コントロール,感染コントロール,栄養管理,物理的安静が重要な因子となる。次に血流評価を行い,虚血を伴う場合には血行再建を図った上で,必要なデブリードマン,抗潰瘍療法を行う。深部感染により急速に増悪する場合には外科的なデブリードマンを行う必要がある。糖尿病性潰瘍・壊疽の重症度を把握するためには,Wagner分類を主体として評価を行う。
糖尿病性潰瘍の治療において,陰圧閉鎖療法やドレッシング剤による方法は,十分に感染を抑えた状態で行う必要がある。感染を伴っていた場合,敗血症などの重篤な症状を起こす可能性がある。
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