株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

夜間の咳を止めるためのはちみつ投与

No.5080 (2021年09月04日発行) P.50

継 仁 (継醫院院長)

登録日: 2021-09-01

最終更新日: 2021-08-31

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

6月5日号(No.5067)「プライマリ・ケアの理論と実践」(執筆者:継 仁先生)に掲載されていた「夜間の咳を止めるためにはちみつを5~10mL投与」について質問です。
①寝る前に5~10mL投与するのでしょうか。
②体重当たり何ccを服用すればいいのでしょうか。
③1歳未満に投与する危険性はなぜでしょうか?
以上の3点をご教示ください。(香川県Y)


【回答】

【はちみつの用法は,寝る30分前に2〜5歳小匙1/2,6〜11歳小匙1。1歳未満へのはちみつ経口投与は,乳児ボツリヌス症発症の危険があり禁忌】

①寝る前に5~10mL投与するのでしょうか。
②体重当たり何ccを服用すればいいのでしょうか。

はちみつの用法は,文献1)2)によると,2~5歳までは8.5mg/回(約2.5mL),6~11歳までは17mg/回(約5mL),12~18歳までは34mg/回(約10mL)を寝る30分前に服用させたところ,デキストロメトルファン内服群,対照群と比較してはちみつ内服群のほうが,夜の咳の頻度,咳の重症度いずれでも改善を認め,よく眠れたと報告されています。 2001年にWHOも推奨し,2018年のCochran Reviewでも有効性を評価しました3)

③1歳未満に投与する危険性はなぜでしょうか?

1歳未満にはちみつを与えることによって乳児ボツリヌス症を発症することがあります。

生後1歳未満の乳児がボツリヌス菌芽胞を経口的に摂取した場合,乳児の腸管内において増殖し,毒素を産生しボツリヌス毒素の作用により発症します。乳児ボツリヌス症は1986年に本邦で報告されてから4),2020年までに42例が報告されています。42例とも1歳未満(中央値生後6カ月;月齢10カ月3例,月齢11カ月4例)でした。

はちみつが原因と推定される乳児ボツリヌス症の報告を受けて,厚生省(当時)は1987年10月に「乳児ボツリヌス症の予防対策について」の通知を出しました5)
その後,はちみつを原因とする症例は1989年に筆者らが報告した1例6)を最後に,2017年まで報告されていませんでした。2017年2月にはちみつを接種した5カ月乳児が発症し,国内で初めての死亡例となりました。

【文献】

1)児玉和彦:症状でひらめくこどものコモンディジーズ. メディカ出版, 2018.

2)Paul IM, et al:Arch Pediatr Adolesc Med. 2007; 161(12):1140-6.

3)Oduwole O, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2018;4(4):CD007094.

4)NIID国立感染症研究所:ボツリヌス症とは. 2021年03月16日改訂
[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansenno hanashi/7275-botulinum-intro.html]

5)[http://idsc.nih.go.jp/iasr/CD-ROM/records/ 08/09302.htm]

6)Toyoguchi S, et al:Acta Paediatr Jpn. 1991;33: 394-7.

【回答者】

継 仁 継醫院院長

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top