抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)が2011年3月に米国食品医薬品局(FDA)承認済みで,本年,国内でも承認を得た
抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2014年7月に国内承認を受けた。ついで FDAからペンブロリズマブ,ニボルマブの順で承認された
B-raf変異陰性進行悪性黒色腫に対して,一次治療として抗PD-1抗体が(腫瘍組織におけるPD-L1の発現にかかわらず),ダカルバジンを上回る臨床効果を認めた
進行扁平上皮-非小細胞肺癌に対して抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2015年3月にFDAから承認された
進行非扁平上皮-非小細胞肺癌に対する抗PD-1抗体(ニボルマブ)は承認申請中である
PD-L1陽性進行非小細胞肺癌に対して抗PD-1抗体(ペンブロリズマブ)が2015年10月にFDAから承認された
一次治療として各社の抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体の第Ⅲ相試験が実施中である
本稿では開発の先行する各薬剤の早期試験の結果と,開発の先行している悪性黒色腫と非小細胞肺癌について記述する。
イピリムマブはCTLA-4分子を抑制する完全ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。イピリムマブは延命効果を示す第Ⅲ相無作為化比較試験(RCT)の試練を経て,2011年3月に切除不能悪性黒色腫に対する免疫チェックポイント阻害薬として世界で初めてFDAにより承認された1)2)。このRCTは,既治療転移性黒色腫患者に対しての,イピリムマブ(3mg/kg,3週間隔,計4回投与)とgp100ペプチドワクチン併用群,イピリムマブ単独群,gp100ペプチドワクチン単独群の3群比較であった。全生存期間中央値では,両剤併用群で10.1カ月,イピリムマブ単独群で10.0カ月,ワクチン単独群では6.4カ月であり,イピリムマブの投与を含む群が有意にワクチン単独群を上回っていた(HR 0.68;P<0.001)。Grade3/4の免疫関連有害事象(irAE)については,ワクチン単独群では3%の患者に認められたが,イピリムマブの投与が含まれる群では10~15%の患者に認められた3)。
引き続き,イピリムマブ(10mg/kg,3週間隔,計4回投与,その後の維持療法としてイピリムマブもしくはプラセボを12週ごとに投与)とイピリムマブ+ダカルバジンを比較した第Ⅲ相試験が施行された2)。全生存期間(OS)では,イピリムマブ+ダカルバジン群がイピリムマブ単独群に比較して有意に延長を認め(11.2カ月 vs. 9.1カ月),1年全生存率は47.3% vs. 36.3%,2年全生存率は28.5% vs. 17.9%,3年全生存率は20.8% vs. 12.2%,HR for death 0.72;P<0.001,であった。G3/4のAEは,併用群でより多くの患者に認められた(56.3% vs. 27.5%,P<0.001)。
進行悪性黒色腫に対してイピリムマブが投与された過去の12の第Ⅱ相と第Ⅲ相の臨床試験(合計1861例)を合わせて解析したところ,OSは11.4カ月で,3年全生存率は22%であった。生存曲線は,イピリムマブの投与量(3mg/kgもしくは10mg/kg),既治療・維持療法の有無にかかわらず,3年前後でプラトーとなった4)。
また,再発高リスクのStageⅢの悪性黒色腫を対象とした術後アジュバント設定でのイピリムマブ投与群(10mg/kg,3週ごと計4回投与,その後は3年まで3カ月ごと投与)(475例)とプラセボ群(476例)との国際二重盲検ランダム化比較試験においてイピリムマブ群で有意に無再発生存率の延長(中央値26.1カ月 vs. 17.1カ月)を認めた5)。全生存率の解析結果が待たれる(NCT00636168)。
トレメリムマブはCTLA-4分子をブロックするヒト化IgG2モノクローナル抗体である。トレメリムマブの早期試験では2~17%の奏効率を認め,150日以上にわたって効果が持続した6)~12)。前臨床および早期臨床データでの標準的投与法は90日ごとに15mg/kgであり,代表的な有害事象は皮疹,下痢,内分泌異常であったが,ほとんどの有害事象は軽度でマネジメント可能であった。
第Ⅲ相試験として,未治療の進行悪性黒色腫患者において(医師の選択による)化学療法 vs. トレメリムマブ(15mg/kg,3カ月)比較試験が行われ,全奏効率(10.7% vs. 9.8%),OS(12.6カ月 vs. 10.7カ月)を示し,トレメリムマブ群の有効性を示すことができなかった13)。現在,トレメリムマブは開発元を変え,ほかの癌種で単剤および併用療法で臨床開発が進められている。
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