リンパ球,リンパ形質細胞,形質細胞が腫瘍化し,骨髄,肝臓,脾臓,リンパ節などを病変とする低悪性度B細胞リンパ腫をリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)と呼ぶ。LPLのうち,IgM型M蛋白血症を有し,骨髄を病変の首座とする場合には,原発性マクログロブリン血症(WM)と呼ぶ。
骨髄浸潤に伴う貧血・血小板減少,リンパ節腫大,脾腫,高サイトカイン血症に伴うB症状(発熱,寝汗,体重減少)および全身倦怠感,高IgM血症に起因する過粘稠度症候群,寒冷凝集素症,末梢神経障害,後天性von Willebrand病などの多彩な臨床像を呈する。
IgM型M蛋白血症などのM蛋白の有無を確認する。骨髄あるいはリンパ節などの腫瘍浸潤臓器においてB細胞,リンパ形質細胞,形質細胞の腫瘍性増殖を確認する。造影CTを用いてリンパ節腫大,肝臓・脾臓腫大,髄外腫瘤の有無を確認する。鑑別すべき疾患はM蛋白血症を合併する他の低悪性度B細胞腫瘍,特に脾B細胞辺縁帯リンパ腫,慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫とIgM型多発性骨髄腫である。臨床像,病変の分布,病理像の相違に加え,MYD88 L265P変異やbcl1/IgH転座の有無が鑑別に有用である。治療介入を要する症候性WMと診断した際には,年齢,M蛋白量(血清IgM値),貧血・血小板減少の有無,β2ミクログロブリン値,血清LDH値,血清アルブミン値などに基づく予後予測を行う。症候性過粘稠度症候群,あるいは血清IgM値が高値である症例においては眼底検査を行い,眼底出血,乳頭浮腫,眼底静脈怒張(ソーセージ様変化)の有無を確認する。
治療介入の対象となるのは,貧血,B症状,過粘稠度症候群などの症状を伴った,いわゆる「症候性WM」である。無症候性WMに対しては,12週間ごとに無治療経過観察を行う。治療介入を行う際の目標は,あくまでも無症候性に導くことであり,完全奏効に導くことではない。過粘稠度症候群を合併する症例に対しては,血漿交換を先行し,その後速やかに化学療法を行う。年齢,frailty,合併症の有無,血清IgM値,腫瘍量などを総合的に考慮し,以下の3群に分類して具体的な化学療法レジメンの選定を行う。
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