インフルエンザはインフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で,国内では冬季に流行がピークとなり,主に咳やくしゃみにより排出される飛沫により伝搬する。
1~3日間ほどの潜伏期間の後に,かぜ症候群と同様の咽頭痛や鼻汁,咳嗽といった症状と38℃以上の高熱や頭痛,倦怠感,関節痛などが出現し,感冒に比べて全身症状が強い。鼻腔拭い液や咽頭拭い液を検査材料として,迅速診断キットによりウイルス抗原の検出ができた場合にインフルエンザと診断できる。
インフルエンザは自然治癒する疾患であるため,対症療法を中心とし,十分な安静と水分補給を指導する。抗インフルエンザ薬の必要性は5歳未満の幼児や65歳以上の高齢者,基礎疾患を有するものなど,重症化のリスクが大きい患者で高く,軽症の成人症例などには必ずしも投薬を必要としない。新しい抗インフルエンザ薬であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬(ゾフルーザ®)は,従来のノイラミニダーゼ阻害薬(リレンザ®,タミフル®,オセルタミビル「サワイ」,イナビル®,ラピアクタ®)への耐性ウイルスや新型インフルエンザにも有効性が期待でき,その利便性から急速に処方数が増大したが,耐性化の拡大が懸念されるため安易な処方は控える。
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