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黄斑上膜[私の治療]

No.5087 (2021年10月23日発行) P.49

辻川明孝 (京都大学大学院医学研究科眼科学教授)

登録日: 2021-10-21

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  • 黄斑上膜は黄斑部の網膜上に膜状物が形成される疾患である。形成された膜により黄斑部網膜が牽引されることにより,網膜皺襞や網膜肥厚を生じる。初期には無症状であることも多いが,牽引が強くなると,視力低下,変視症,大視症などの自覚症状が現れるようになる。

    ▶診断のポイント

    眼底検査により,黄斑部の網膜上に透明~わずかに白っぽい膜が観察される。セロファン膜のようにキラキラ光っていることが多い。黄斑上膜によって牽引された網膜には皺襞がしばしば観察される。診断には光干渉断層計(OCT)による検査が必須である。眼底検査では確認できないような薄い透明の黄斑上膜でも,OCTでは容易に検出可能である。OCTで撮影された網膜の断層像では,網膜表面に膜様物が明瞭に観察され,網膜の表面に形成された皺襞も観察される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    黄斑上膜は原因の明確でない特発性黄斑上膜と続発性黄斑上膜に分類される。特発性黄斑上膜は,後部硝子体剝離形成後に,残存した硝子体皮質,後部硝子体膜が増殖して形成されると考えられている。続発性黄斑上膜は網膜裂孔,網膜剝離,ぶどう膜炎,糖尿病網膜症,強度近視,眼内腫瘍などの疾患に続発して形成される。続発性黄斑上膜の場合には最初に原因を見きわめ,原疾患に対する処置が必要でないかどうか判断する。

    近年,OCTによる詳細な観察によって黄斑上膜の病態理解が大きく進歩した。OCTによる黄斑上膜・黄斑部網膜の形態から,黄斑上膜,黄斑偽円孔,層状黄斑円孔,foveoschisisに分類される。

    黄斑上膜に対する治療では,硝子体手術による黄斑上膜の剝離を行う。しかし,黄斑上膜は失明に至る疾患ではない。また,徐々に症状の悪化を自覚することもあるが,長期間にわたって進行がみられないことも多い。しかし,自覚症状が高度に進行した後に手術を行っても,視力・変視症などの症状の改善は限定的である。自覚症状が軽い時期に手術的に黄斑上膜を除去したほうが視力予後はよいことから,極度に進行する前の加療が望ましい。しかし,硝子体手術は侵襲を伴った手技であり,低いながらも網膜剝離などの合併症のリスクもあるため,手術適応の決定は難しいことも多い。症状の悪化を自覚した時期が手術に踏み切る1つの目安であると考えるが,最終的には本人の意向によるところが大きい。

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