わが国の糖尿病ガイドライン(糖尿病診療ガイドライン2019)において、心不全(HF)例に禁忌とされているのはチアゾリジン薬である。しかしSU剤も、HF例の転帰を増悪させる可能性があるようだ。またメトホルミンでは逆に、HFpEFに対する転帰改善作用が示唆された。米国における大規模観察研究の結果である。11月13日からオンライン開催されている米国心臓協会(AHA)学術集会にて、Muhammad Shahzeb Khan氏(デューク大学、米国)が報告した。
解析対象とされたのは、米国で2006年から2014年にかけて心不全で入院した、65歳以上で血糖低下薬使用中の糖尿病例である。AHA主導による“Get With the Guidelines-Heart Failure”(GWTG-HF)レジストリから抽出した。
これらからチアゾリジン薬処方例とメトホルミン、SU剤処方例、また推算糸球体濾過率「<45mL/分/1.73m2」例を除外した後、メトホルミンとSU剤の新規「開始」群に分け、「非開始」群と12カ月後の転帰を比較した。「開始」群と「非開始」群は、バイタルサインと腎機能、合併症、心不全治療薬、社会背景など29の因子でマッチさせてある。
その結果、メトホルミン新規「開始」群(454例)では、「非開始」群(5398例)に比べ、「死亡・HF入院」ハザード比(HR)が 0.81(95%信頼区間[CI]:0.67-0.98)と有意低値となっていた。興味深いことに、左室駆出率(EF)の高低で2群に分けると(群間比率不詳)、EF「>40%」群におけるメトホルミン「開始」群のHRは0.68(0.52-0.90)で、「≦40%」(1.04[0.78-1.39])に比べ、リスク低下率が大きい傾向にあった(交互作用P=0.040)。
一方、SU剤新規「開始」群(454例)では、「非開始」群に比べ、「死亡・HF入院」HRは1.17(1.00-1.37、P=0.047)の有意高値だった。またこのリスク増加は、EFの高低に影響を受けていなかった。
本研究はAHAからの資金提供を受け実施された。