呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)は肺サーファクタントの欠乏により肺胞構造が維持できず虚脱し,酸素化換気障害をきたす早産児の代表的呼吸障害である1)。早産であるほど頻度は高くなり,発症率は在胎22~24週では95%以上1),在胎28週未満で50%,在胎28~31週で30%,在胎32~36週で10%2)とされている。
古典的な臨床症状は,呻吟,陥没呼吸,鼻翼呼吸,チアノーゼ,酸素需要の増加,無呼吸である。出生時は症状がなくても,次第に所見が増悪し発症することも多い。ただし,上記症状は他の呼吸器疾患にも共通しており,非呼吸器疾患でもみられる。
発生頻度が高くなるのは,早産,帝王切開,男児,母体糖尿病,新生児仮死である3)。対して,発生頻度が低くなるのは,母体へのベタメタゾン筋注,母体の妊娠高血圧症候群,胎児発育不全(FGR),長期破水,絨毛膜羊膜炎である3)。
胸部X線写真で①肺容量低下と,②網状顆粒状陰影またはすりガラス様陰影,および③気管支透亮像(air bronchogram)を認める。胸部X線所見によるRDSの重症度評価としてはBomsel分類*1が代表的である。類似のX線所見を呈する疾患として,呼吸器疾患すべて(胎便吸引症候群,肺炎など)が鑑別に挙がるが,心疾患〔特に新生児遷延性肺高血圧症(PPHN),総肺静脈還流異常症(TAPVC)〕を忘れてはならない。RDSの発症予知も含めた迅速診断にマイクロバブルテスト*2も有用であるが,感度が80%と高くはないため,カットオフ値以上でもRDSはみられる。
*1 Bomsel分類:Ⅰ度は肺野透過性および中央陰影の輪郭は正常で,微細な顆粒状陰影を主に末梢部に認めるのみで,air bronchogramは欠如もしくは不鮮明。Ⅱ度は中央陰影の輪郭は鮮明だが,肺野透過性は軽度低下しており,網状顆粒状陰影を全肺野に認め,air bronchogramを鮮明に認める。Ⅲ度は肺野透過性の著明な低下,中央陰影の輪郭不鮮明で拡大も認め,顆粒状陰影は粗大で,air bronchogramを鮮明に認める(図)。Ⅳ度は全肺野が濃厚影で覆われ,中央陰影の輪郭は消失し,air bronchogramを鮮明に認める。
*2 マイクロバブルテスト:早産児の出生時羊水または胃液(嚥下羊水)を用いて,パスツールピペットで6秒間に20回の頻度で泡立て,1mm2当たり直径15μm未満の安定小泡を数える。小泡数が少ない場合(15個/mm2未満)にRDSと診断する。
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