慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)は,成熟リンパ球が主として骨髄および末梢血液中で腫瘍性に増殖する疾患である。いくつかの類縁疾患があるが,本稿では,CLLの中で最も頻度の高いBリンパ球性CLL(B-CLL)について取り上げる。ただし,日本を含むアジア諸国では欧米と比較しB-CLLの発症頻度は1/10以下と少なく,新規の患者数が年間100万人当たり数人と稀な疾患である。
血液検査にてリンパ球数の上昇(5000/μL以上)を認めた場合,フローサイトメトリー検査により,そのリンパ球がCD19,20,23を発現する成熟Bリンパ球であり,免疫グロブリン軽鎖のsIgκかsIgλを発現するBリンパ球のどちらか一方が優位に多い割合で存在するクローン性増殖であることを確認し,そのクローン性Bリンパ球にCD5の発現が確認されれば,B-CLLと診断される。形態的には小型~中型の成熟リンパ球であり,リンパ節腫大を認める場合,リンパ節の病理組織診断では,小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma:SLL)となる。
B-CLLの診断が確定しても,必ずしもすぐに治療を開始する必要はなく,貧血・血小板減少の合併・進行,リンパ球数の6カ月以内の倍増,リンパ節腫大や脾腫の増大傾向,B症状(発熱,夜間盗汗,体重減少)などを認める場合に,治療開始の適応となる。また,予後因子がいくつか知られており,最も重要でありかつ保険適用で行える検査が,FISH法によるdel(17p)(17番染色体短腕の欠失)の検出である。本染色体異常を認める場合,従来の免疫化学療法(抗CD20抗体薬+アルキル化薬,プリン類似薬)では効果が限定的であるため,治療法を選択する際にも重要な判断基準となる。
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