日本医療機能評価機構は2月15日に公表した「医療安全情報No.183」で、医師が散剤を処方する際に、製剤量と成分量を取り違えてオーダーしたために、過量投与となった事例を紹介し、注意を呼びかけた。
機構が、製剤量と成分量の取り違えによる医療事故事例を取り上げるのは、2007年8月に続いて2回目。初回の注意喚起後も類似の事例が8件報告されていることから、再度の情報提供が必要だと判断した。
今回の医療安全情報では報告事例のうち2事例について、発生の経緯などを詳しく紹介した。1件目の事例では、散剤は成分量で処方オーダーすることが院内のルールだったが、事例に関わった医師は、そもそも散剤に製剤量と成分量があること自体、知らなかった。ところが、「アレビアチン散10%」を服用している患者の入院時に患者が持参した診療情報提供書には、同剤の1日投与量が院内ルールとは異なる製剤量で「1日2g」(成分量では1日200mgに相当)と記載されていた。
医師はこれを成分量による記載と誤認。単位をmgに修正し、本来の10倍量に相当する「1日2000mg」で処方オーダーを出した。その後、薬剤師から疑義照会があったものの、そのまま調剤するよう指示。看護師も薬包に入った粉の量が多いことに疑問を持たずにそのまま投与し、2日後に病棟薬剤師が過量投与に気づいた。
もう1件の事例も施設間の記載ルールの違いが原因で発生したもので、院内では成分量によるオーダーがルール化されていたにも関わらず、上級医が以前の勤務先のルールである製剤量で他の医師に処方を指示したために誤認が生じ、過量投与につながった。
こうした医療事故の発生を防止するため機構は、施設間の診療情報提供書などによる情報共有の際、散剤の処方に関しては「製剤量」と「成分量」のどちらであるのかを明記する必要があると指摘。事例が発生した医療機関では、▶処方オーダー画面や処方箋に「製剤量」あるいは「成分量」と表示する、▶散剤には「製剤量」と「成分量」があることを医師・看護師に教育する―といった取り組みが行われているという。