1 チェーン・ストークス呼吸(CSR)とは?
・チェーン・ストークス呼吸(CSR)は,中枢性睡眠時無呼吸低呼吸に伴う呼吸パターンである。
・CSRの判定基準(以下の2項目を満たすこと)
①3回以上連続する中枢性無呼吸や中枢性低呼吸が,呼吸振幅の漸増・漸減変化により区分され,その周期が40秒以上
②2時間以上のモニター記録で,睡眠1時間当たり5回以上の中枢性無呼吸や中枢性低呼吸が呼吸振幅の漸増・漸減変化を伴う
・CSRは,心不全患者の予後予測因子である。
・CSRの病態学的意義は,まだよくわかっていない。
2 チェーン・ストークス呼吸(CSR)はどうやって見つける?
・CSRではいびきは認められず,日中眠気の訴えもほとんどない。
・臨床症状からCSRを疑うことは難しい。
・診断のためには,睡眠検査での客観的な評価が欠かせない。
・典型的なCSRであれば,パルスオキシメーターでも検出可能である。
3 チェーン・ストークス呼吸(CSR)の波形から心不全を考える
・CSRの波形は多彩である。
・CSRには2つの異なる特徴的な呼吸波形パターン(positive pattern,negative pattern)がある。
・心機能が悪いほどnegative patternの呼吸波形パターンを示す傾向がある。
・CSRのnegative patternは,左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)の心機能維持のための代償機転である可能性が指摘されている。
4 日中覚醒時のチェーン・ストークス呼吸(CSR)
・CSRは日中覚醒時や立位でも発生する。
・「日中の10%以上のCSR」および「立位CSR」は独立した予後規定因子である。
・心不全,特に重症心不全患者に対しては,夜間の睡眠検査だけでなく,日中の呼吸状態の評価も必要である。
5 チェーン・ストークス呼吸(CSR)に対する陽圧呼吸療法の現状
・中枢性優位の睡眠時無呼吸を伴う,LVEF 45%以下の慢性心不全患者を対象としたASV(adaptive servo-ventilation)群 vs. control群のランダム化比較試験(SERVE-HF試験)では,ASV群で心血管死亡リスクを34%相対的に増加させた。
・日本循環器学会および日本心不全学会が公表しているステートメントでは,SERVE-HF試験の被験者と同じ状態の患者へのASVの導入・継続は禁忌ではないものの,慎重な姿勢をとるとともに,できる限り持続陽圧呼吸(CPAP)療法の使用を求めている。
・CSR自体を標的とした治療のアルゴリズム確立に向けて,現在も国際的な議論が重ねられている。