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前立腺炎症候群[私の治療]

No.5111 (2022年04月09日発行) P.45

髙橋 聡 (札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座教授)

登録日: 2022-04-11

最終更新日: 2022-04-05

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  • 前立腺炎症候群は,男性の泌尿器科疾患の中で最も罹患頻度の高い炎症性疾患である。前立腺炎の分類は,現在は,NIH(National Institutes of Health)分類が広く研究および実臨床に用いられている。カテゴリーⅠ(急性細菌性前立腺炎)およびⅡ(慢性細菌性前立腺炎)は細菌感染によるとされ,抗菌化学療法の適応である。カテゴリーⅢは慢性骨盤痛症候群/慢性前立腺炎と定義されている多要因性の症状症候群である。カテゴリーⅣは前立腺圧出液(EPS),前立腺マッサージ後の初尿(VB3),精液,前立腺組織のいずれかに白血球や細菌を認めるが無症状のものと定義され,治療の適応はない。

    通常は細菌性前立腺炎の割合は5~10%と低い。カテゴリーⅢ前立腺炎は,20歳以上の男性では2~12%に自覚症状を認めるとされ,9~16%の男性が慢性前立腺炎の診断を受けるとされている。

    ▶診断のポイント

    カテゴリーⅠは,悪寒戦慄を伴う発熱などの全身症状と排尿痛などの局所症状を認める。

    カテゴリーⅡは,陰部を中心とした疼痛ないしは不快感のほかに,排尿症状や射精時痛など,症状は多岐にわたる。

    カテゴリーⅢは,定義上は明確な病理学的要因がないものの,持続的な骨盤痛を主体とした症状が6カ月間のうち3カ月は持続し,種々の排尿・性機能障害を伴うものとされている。主たる症状は痛みである。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性細菌感染症であるカテゴリーⅠでは,尿培養・血液培養提出後に抗菌薬を投与する。治療効果が得られない場合には重症感染症への進展を考慮して画像検査などを行う。カテゴリーⅠにおいては,前立腺マッサージは禁忌である。カテゴリーⅢに対しては,その症状に応じて治療法を選択することになる。治療期間が長くなる場合もあり,必要であれば肝機能検査などを考慮する。

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