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脳動静脈奇形(AVM)[私の治療]

No.5112 (2022年04月16日発行) P.48

長谷川 仁 (新潟大学脳研究所脳神経外科教室講師)

藤井幸彦 (新潟大学脳研究所脳神経外科教室教授)

登録日: 2022-04-16

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  • 脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)は,胎生4~8週の胚発生障害に起因する先天奇形であり,ナイダスと呼ばれる異常血管を介して脳の動静脈に短絡が生じる病態である。10~30歳代の若年発症が多く,発症様式は頭蓋内出血が最多であり,ついでてんかん発作である。年間発見率は1.1~1.4/10万人とされ,比較的稀な疾患である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    頭蓋内出血やてんかん発作による突然の意識障害,痙攣や片麻痺などの神経症状をきたす。また,慢性的な頭痛や,盗血現象に伴うと考えられる周囲脳組織の慢性的な血流障害による精神症状や局所神経症状などを呈することがある。

    【画像診断】

    破裂例では単純CTで頭蓋内出血(脳出血やくも膜下出血)が認められる。造影CTやMRIにてナイダスを示唆する異常血管塊が脳実質内に認められる。脳血管撮影により,ナイダスとそれに関連する動静脈短絡の所見から確定診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    AVMに対する治療は,頭痛やてんかんに対する薬物対症療法を除いて,(再)破裂予防を主目的とする外科的介入,すなわち摘出術,カテーテル塞栓術,定位放射線(ガンマナイフ:GKS,サイバーナイフ:CKS)の3つの治療法が基本となり,単独もしくは組み合わせた集学的治療による根治を目標とする。しかしながら,破裂例と未破裂例でその自然歴が異なることや,個々の症例ごとに複雑な解剖学的特徴を有することから,治療方針は一様ではない。

    3つの治療法の中で,摘出術が根治性・即効性に最も優れるが,反面リスクや侵襲も大きい。カテーテル塞栓術は低侵襲で即効性もあるが,根治性に劣る。GKS/CKSは低侵襲であるが,特にナイダスサイズが大きな場合で根治性に劣り,さらに効果が現れるまでに年単位の長期間を要する。各治療法におけるこれらの特徴をふまえた上で,摘出術の難易度,つまりナイダスの大きさ,局在,導出静脈の3要素について評価し,5段階に分類(1が低難度,5が高難度)するSpetzler-Martin(S-M)分類1)に基づき,摘出術を中心として,他の治療法をどのように組み合わせるか,という観点で治療計画を組み立てる。

    【治療上の一般的注意】

    未破裂AVMについては,近年内科的治療が侵襲的治療に優るランダム化比較試験の結果が報告され2),外科的介入についてはきわめて慎重に適応を考えなければならない。

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