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睫毛内反[私の治療]

No.5112 (2022年04月16日発行) P.50

鈴木由美 (杏林大学医学部眼科准教授)

登録日: 2022-04-14

最終更新日: 2022-04-12

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  • 睫毛内反とは,一般的に言われる「逆さまつ毛」のことである。しかし,この呼称は,睫毛内反以外に,「眼瞼内反」「睫毛乱生」でも用いられる。眼瞼全層が内反する「眼瞼内反」や睫毛根部の炎症等による毛根の位置異常や睫毛の生える向きが異なる「睫毛乱生」とは病態が異なり,「睫毛内反」は睫毛の発生位置に異常がなく,眼瞼は正常であるが,睫毛自体の向きが眼球側に向いている状態を言う。先天性で小児の両側の下眼瞼に多く,原因は眼瞼組織の未発達に加え,東洋人は乳幼児期に鼻根部が低いため,瞼縁に近い眼瞼余剰皮膚(眼瞼贅皮)により,睫毛が眼球側へ圧排されるために生じると考えられている。

    ▶診断のポイント

    眼縁が余剰皮膚によって見えず,睫毛が眼球側に向いている状態は,視診でも確認できる。細隙灯顕微鏡検査で,フルオレセイン染色を行うと角膜上皮欠損部が黄緑色に染まり,角膜上皮障害の程度および内反の範囲を把握しやすい。また,睫毛内反の主な症状は,睫毛が角結膜に接触することによる眼刺激症状で,流涙,結膜充血,眼脂,羞明および目をよくこする,などがみられることが多い。角膜上皮障害が強い場合は,太陽光を極端に嫌がり,目を細め,顎を引いて物を見る頭位異常を呈する(chin down)。ただし,乳幼児期の流涙,眼脂や羞明を呈する疾患として,重大な視力障害をきたす先天緑内障や先天鼻涙管閉塞,感染性の角結膜炎などを鑑別することが重要である。

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