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腹痛[私の治療]

No.5115 (2022年05月07日発行) P.42

小倉裕司 (大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター准教授)

登録日: 2022-05-04

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  • 腹痛の原疾患は多岐にわたる。腹痛の診察で大切なことは,緊急度の高い疾患の外科的(手術)適応を見落とさないことである。特に,「ショックバイタル」「腹膜刺激症状」「腸閉塞症状」の存在は治療介入を要するため,迅速な診断が重要である。腹痛の鑑別,治療方針の決定には,問診,身体所見,画像検査(超音波検査,腹部単純X線検査,腹部骨盤造影CT検査)が有用である。急性腹症では,緊急手術・IVR,専門施設への転送,集中治療の必要性を見抜く。中でも,高齢患者における急性腹症は,症状が非特異的であるため正確な診断がしばしば困難であり,注意を要する。診断確定後の治療法の詳細は各稿を参照のこと。

    ▶病歴聴取のポイント

    早期診断・治療のために適切な病歴の聴取と情報収集がきわめて重要である。既往歴,現病歴を患者,家族などから十分に聴取する。腹痛の部位,発症様式(突然発症,激痛の有無など),性状(持続/間欠,痛みの増悪・寛解因子),随伴症状,月経・妊娠の有無などを確認する。随伴症状として,①嘔吐,下痢,吐血・下血,黄疸などの消化器症状,②血尿,排尿時痛,陰囊痛などの泌尿器症状,③不正出血,帯下などの産婦人科症状の有無の確認,④心窩部痛や上腹部痛がある場合は心大血管系,呼吸器系疾患も念頭に置く。既往・生活歴として,糖尿病などの併存疾患,入院歴,手術歴(特に開腹術),薬物の服用歴,外傷の既往,感染症,月経歴,喫煙の有無,アルコール摂取量,職業などを尋ねる。海外渡航歴や最近の食事内容(生食など),同じ食事をした人の症状にも注意する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    患者の全身状態の把握を最優先する。顔色不良,蒼白,冷汗,疲弊,努力呼吸,不穏や意識低下,など患者の第一印象に注意する。また,気道(A),呼吸(B),循環(C),意識(D)などバイタルサインの異常から緊急性を判断する。特にショックの早期発見・治療に努める。

    【身体診察】

    年齢・性別を意識しながら,腹部の視診,触診,聴診などを行い,ヘルニアの有無,手術創の有無,腹膜刺激症状(筋性防御,反跳痛,腹部板状硬)や腸管閉塞(腸雑音の亢進,腹部膨隆)の徴候を確実に診察する。腹痛の部位により,腹部を上下,左右で4分割し,部位別に代表的な疾患の鑑別を進める。腹部臓器に由来する腹痛の原因は,炎症,穿孔,破裂(出血),閉塞,循環障害,結石に大別され,内臓痛,体性痛,放散・関連痛で痛みの特徴も異なる。たとえば急性腸間膜動脈閉塞症などの腹部の血管疾患では,腹部全体の激痛のわりに腹膜刺激症状に乏しい。

    腹痛をきたす疾患でも,腹部だけに目を奪われず,胸部症状(主に左右季肋部痛と心窩部痛),全身性疾患の部分症状(主に臍部痛あるいは腹部全体の痛み),その他(帯状疱疹,脊椎・脊髄の疾患,腹壁痛など)に注意する。

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